このまま入ったら髭面の親父から「っらっしゃい!」とでも声が掛かるかとも思ったが、とりあえずノックすることにした。

「すみませ〜ん、遠坂凛さんこちらに居ますか〜」

「遅〜い」

間髪いれず扉が開き、不機嫌極まりない表情の遠坂が顔を出した。

「ごめん、遅れた。でも遠坂だって悪いんだぞ、番号なんか何処にも書いてないじゃないか」

「そうだっけ? 別に良いじゃない辿り着けたんだから。セイバーが暴れだす前に入った入った」

主に諌言する僕にはもっと感謝してほしいぞ、などと思いつつも俺は遠坂に促されて中に入った。
……なにか従者根性が染み付きつつあるような気がする……





おうさまのけん
「剣の匠」  −Wilhelmina− 第一話 後編
Legion






で、入ったその工房だが、文字通り「道具屋ボルタックス」だった。
カウンターがあり、壁には各種の剣や防具が並べられていた。ずらりと並んだ棚はそれぞれ用途別に魔具や薬、宝玉が整理されて陳列されており、奥には鍛冶場まであるようだ。

「本当に「ボルタックスの道具屋」なんだ……」

俺は感心したように呟いていた。

「なにそれ? ま、いいわ。まずここの主を紹介するから。それからお昼にしましょ」

俺の呟きをはてっと言った顔で流すと、遠坂は奥へと案内してくれた。そういやぁコンピュータ関係全滅だったな、遠坂は……

「セイバー、お弁当来たわよ」

「ああ、シロウ。待っていました。もう少し遅くなったら、どうにかなってしまうところでした」

奥の部屋には、何本かの剣を脇に立てかけて、セイバーが鎧姿で立っていた。
魔力の消費を抑えるために最近では余り見ることのなかった姿だ。ふと最初の出会いを思い出す。

ああ……

凛とした気品ある立ち姿、硝子細工のような白皙の顔、金糸を織り込んだような髪……

うれしそうに弁当箱を抱えてさえいなければ、あの時のままだ……
こんな食いしん坊さんだとは思わなかったなぁ。

「ああ、来た来た。士郎、ここの主を紹介するわ」

そんなセイバーの姿に、思わず色んな意味の溜息をついていたら、奥の鍛冶場から出てきた人影に気が付いた遠坂が俺を呼んだ。
きっと髭小人ドワーフのような人なんだろうなぁと思ったのだが、流石にそこまではボルタックスしていなかったようだ。確かに背は低い。セイバーと同じくらいだろうか。ちょっとばかり汚れたツナギを着て、帽子に銀色の髪をたくし込んだ余り魔術師らしくない女性だ。

「彼女がここの主で、わたしの同期のヴィルヘルミナ・フォン・シュトラウス嬢よ。で、こいつが士郎、わたしの不肖の弟子」

遠坂がその女性を紹介してくれた。

「士郎・衛宮です。よろしく。専科で学生してる遠坂の弟子です」

ヴィルヘルミナ嬢も俺に挨拶してくれた。

「衛宮――――士郎さん? 始めまして。ヴィルヘルミナです。ミーナで良いですよ」

にっこり笑って握手してくれる。あ、なんか好印象。

「お噂は凛さんから伺ってます……ルヴィアさんからも」

この二人の名前が出た瞬間、俺がどう噂されているのか考えるのを止めた。どんな事を話されていたか凄く不安だがとりあえず止めた。

「たいへん……その……良い人だと……」

複雑な笑みを浮かべるミーナさん。いや、良いんですその心遣いだけで……心遣いなんかされたの久しぶりだなぁ……

「そこ! 呆けてないでお昼のしたく! セイバー! いつまでお弁当箱抱え込んでるの? ここに置きなさい」

遠坂が何か不機嫌に食事の用意を急かす。って四人前ってミーナさんの分もか?

「おい、遠坂。弁当和食だぞ? 箸しかもって来てないぞ?」

「あ、お箸つかえますから」

そんな俺の言葉に、鍛冶場からポットを持ってきてくれたミーナさんが返事をする。へえ、器用なんだな。




で、そのままお弁当タイムになだれ込んだ。
だし巻きに空揚げ、金平に煮物とあまりこっちではなじみの無いメニューだったが、おおむね好評だった。ただ、お茶はコーヒーしかないとの事で白湯になってしまった。おかげで遠坂とセイバーに怒られたんだが……普通、お茶葉は持ってこないぞ。
食後のひと時はミーナさんが入れたコーヒーをご馳走になった。結構濃いがこれはこれでなかなか……遠坂、顔しかめるな顔を。

「あ、シュトラウスって思い出したぞ、専科の講義で受けた。戦闘魔術だっけ?」

そんなのんびりとした食後の一時、俺は魔術師の工房ラボというより、文字通りの工房ワークスじみた室内を見渡しながら、ふと思い出した。

「逆、魔術戦闘よ」

それに遠坂がすかさず突っ込む。

「どこが違うんだ?」

「あのねぇ……とうのご本人の前で恥かかせないでよ。戦闘魔術ってのは魔力弾ぶつけたり、氷や炎の属性に魔力を乗せて打ち出したりするヤツでしょ。魔術戦闘ってのはそういったものも含めて、魔術を組み合わせて戦う技術のこと」

遠坂ががぁ――っとばかりに捲し立てる。すまん、確かに恥ずかしい。道理で講義内容がちんぷんかんぷんだった訳だ。魔術の話のはずなのに、戦史とか武器の取り扱いとか相手の心理がどうとか……妙な話だとは思ってた。

「あ〜、でもなんかここは雰囲気違うな、シュトラウスってもっと軍隊みたいなものかと思ってた」

「郊外の工房は……そうですね、軍事施設みたいな感じを受けるかもしれませんね。でもここは私の個人的な工房なので家業の本道に戻ってるんですよ」

ミーナさんが歌うように応えてくれる。本道って道具屋さんが?

「シュトラウスの本道は鍛冶屋なの」

遠坂がそれを受けて続けた。ミーナさんに目線で良い? と尋ね、了解を取ると先生モードに移行した。

「鍛冶屋って……ああ、そうかそれで剣か、刀鍛冶なんだな」

「はい、なかなか良い剣を鍛えています。格はそう高くありませんが素直で、なにより扱いやすい」

俺の言葉を受けてコーヒーはちょっと苦手らしく、ミルクをたっぷり入れて飲んでいたセイバーが嬉しそうな表情で言った。
脇に立てかけられた数本の剣を愛しげに眺めている。ちょっと危ない。

「あ、それか。この間いっていた剣って」

セイバーの剣は宝具としてエクスカリバーがある。しかし風王結界で見えない状態でも、使うと魔力の消費が馬鹿にならない。さらに現状の小競り合い程度ならその状態でもオーバーキルだ。そんなわけで普段着の剣を二本ほど調達することになっていたのだ。

「それが問題なのです……」

と、セイバーは厳しい表情で唇を噛み俯いた。

「一本はこのバスタードソードを選んだのですが、もう一本が……私の剣術からすると重い剣の方がいいのですが、それでも魔力の通りの良いほうにするか、それとも元々の付加魔力の大きいほうにするか……それともいっそ両手剣で双方を満たすか……ああ、でも私の身長だとこれは少々扱いづらい……このレイピアという剣で鎧の無い状態の剣術に挑戦するというの捨てがたいと……くっ、二本しか求められない自分が恨めしい」

悩んでいるらしい……
遠坂もちょっと引いたらしく、コホンと咳払いすると話を戻した。

「そ、刀鍛冶。大昔の単に剣を鍛つだけで魔剣を鍛えたのがミーナんとこの源流よ。で、より良い剣を鍛えるために剣の使い方を覚え、さらに強い魔剣を鍛つために魔術を覚え、ついには剣と各種魔法を組み合わせた魔術戦闘を身に付けて現在に至るってわけ」

「でもここは? 剣だけじゃないみたいだけど?」

「私共は余り魔術師としての格は高くないんです。格下が戦闘で格上の魔術師に勝とうとしたんですから、形振りかまわず色々な道具を用意したわけなんですよ。もともと剣を持ってましたから、そういう事に抵抗が少なかったんでしょうね」

ミーナさんが遠坂の後を受ける。ああ、なんか身につまされる話だな、他人事じゃない。

「でもそれって魔術師っていうよりも、魔術使いって感じだな」

瞬間、空気が変わった。
ミーナさんは平然としているが、遠坂はえらく渋い顔になった。なんか禁忌にでも触れたみたいだ。

「え〜と……」

「『魔術師最強の魔術使い』」

遠坂がミーナさんに済まなそうにぽつりと呟いた。

「それがシュトラウス家の二つ名よ、もう良いでしょ? 話を変えましょ」

なにか複雑な話らしい。その後、話は遠坂が頼んだ魔具のことやセイバーの剣のことに移って行った。剣の耐久魔力がどうの属性概念の展開がどうのと専門的な話だ。

だが俺はその間、別の事を考えていた。
魔術師と魔術使い。これから遠坂と生きていく上で避けて通れない問題だ。
魔術師は“根源”を目指す。
実際はどうでもこれは基本だ。魔術師は代々を重ね魔術を極めその道を進む。そして魔術使いとは魔術を道具として使って何か他の目的を遂げようというものだ。同じ魔術を使うとはいっても根本が違うわけだ。
実のところ魔術使いと魔術師は厳密に区別されているわけではない。一般的には全て魔術師なのだ。
たとえば俺の養父おやじ、衛宮切嗣は、魔術師だったが本質は魔術使いだったと思う。
そして現実では魔術使いは魔術師にとって一種の蔑称だ。それはそうだろう、根源への道という究極目標を捨てて脇道に進む、知の無駄使い、本来純粋だった水に混ぜ物を入れられるようなものだ。
遠坂でもそうだった。俺が養父おやじと俺の事を話した時、遠坂は養父おやじと俺に怒りを、憎しみさえも覚えていたようだった。

そして先ほどの『魔術師最強の魔術使い』
誰が言ったか知らないが、魔術師が言ったなら一種の蔑称だろう。だが同時に畏怖と賞賛もうかがえる凄く複雑な言葉だ。
遠坂が複雑な顔をしたのもわかる。ミーナさんと話しているときの遠坂は地だ。つまり友人として見ている。あいつの友人になることがどれだけ凄いことかは、俺は良く知っている。
しかも魔術師同士だ。俺が良く知っている魔術師は遠坂とルヴィア嬢くらいだが、あの二人が特別なのはわかる。
ほかの魔術師はほとんどが傲岸不遜な孤立主義者で個人主義者だ、取引相手はともかく友人を持とうなどとは考えたことも無いだろう。そんな中で友人と見ているのだ。人としても魔術師としても敬意を持つに足る人なのだろう。そんな人を他の魔術師と同列な意味を込めて「魔術使い」と呼ぶのは遠坂にとって憤懣やるかたないことだったのだろう。
俺も、あの人はいい人だと思う。
……なんせ俺に心遣いしてくれた。他に良く知っている二人の魔術師にも心遣いしてほしいもんだ……

「ほら、呆けてないで。こっち来なさい」

「え、なに?」

「あんたねぇ……お昼ごはん食べにきたわけじゃないでしょ? ほら、今ミーナが士郎用の補呪具用意してくれるから、試してみなさい」

遠坂が何か嬉しそうに扉ををコツコツ叩きながら俺を呼んだ。いったいどんな物だろう? 確かに興味がある。俺が遠坂に連れられて表のカウンターに着くと、ミーナさんが棚からなにか小さな紙のケースを取り出していた。

「あ、消費型にしたんだ」

それを見て遠坂が言った。

「ええ、恒久型も考えたんですけど良い素材が見当たらなくて、余り高価すぎたら駄目でしょ?」

お金の話が出て遠坂が渋い顔をする。なぁ、俺は知ってるんだぞ。お前、俺の給料アップ分でまた宝石のローン組んだろ……
そんな遠坂と俺に苦笑しながら、ミーナさんは紙のケースを一つ開いて中身を並べた。

トランプ?

「プレイングカードね。あ、納得。これ良いじゃない」

ふふんとばかりに、遠坂がカードを一枚手にとって軽く指先を走らせる。手に取ったのは予想通りダイヤのクイーン。

「最初は小アルカナにしようかとも思ったけど、タローの呪性が強すぎて。あっちのほうが具象性が高いから良い筈なんですけど」

「良いんじゃない? これだけ象徴性高いと変な癖つかなくて。士郎の場合あんまり具体的過ぎると、剣に引っ張られちゃうと思うのよ」

なんか勝手に盛り上がっている二人に、俺は異議申し立てをした。

「あ〜使用予定者にも説明がほしいぞ、なに言ってるのかさっぱりだ」

「どこら辺から?」

にっこり笑って即座に返してくれたのは遠坂嬢。くそ、試してやがる。

「このトランプをどう使うかからだ。さすがに、補呪具の消費型と恒久型の違いくらい知ってるぞ」

消費型とは一回使うと無くなってしまうもの、恒久型は使っても無くならないものだ。あと補充型と言ってチャージ数だけ使えるタイプもあるらしい。

「じゃカードのスーツの意味は?」

とっても楽しそうな遠坂先生の小テスト第二段。

「ええと、ダイヤはコインで富、ハートが杯で命、クラブが杓で権威、スペードが剣で力……ああ、そうか」

「そ、象徴性高いけど、プレイングカードには剣の要素が含まれてるわ。士郎はパスさえもまず剣を通さなきゃ駄目でしょ? だからこれを使うの」

「試して見てください、試作品ですが発動はしますから」

ミーナさんに進められてカードを一枚取る。

「思い切り悪いのねぇ」

俺が手に取ったカードを見て、遠坂がふふんとばかりに嘲る。悪かったな臆病で……ちなみにスペードの二だ。

「魔術回路をオンにして、発動しない程度に魔力通してみなさい」

カードを取ったは良いが戸惑う俺に、遠坂はカウンターの下で蹴りを入れつつ教えてくれた。
ああ、もう。にっこり笑って頑張りなさいねって顔しながらそういうことするなよ。

「―――同調開始トレース・オン

俺は一つ遠坂を睨み付けてから魔術回路を開き、慎重にカードに魔力を送り込んだ。
へぇ……
軽く浸透させただけで、カードに簡易の魔法陣が浮かび魔術の手ごたえを感じた。
魔法陣から二本の魔力線が流れ、魔力の本格注入と同時にワンアクションで魔弾が放たれるだろう事が実感できる。不思議な感覚だ。なにか、こう……長いトンネルを抜けたらそこに青空が広がっていた、とでも言うような感じだ。

「カードの数字は送り込める魔力の限界ってわけね」

嬉しげに遠坂が解説する。こういうの本当に好きだな。

「理屈は分かるでしょ? カードが内包する“剣”を通じてスペードのスーツが持つ“力”にパスが通じるわけよ」

「他のスーツにはどんな意味があるんだ?」

今まで届かなかった魔力が届いたと言う実感が新鮮で、俺は俄然興味がわいてきた。

「ハートには治癒、ダイヤには移送、クラブには浸透が付加されてます。スペード以外のスーツだと、一旦スーツの意味をバイパスにするんでワンアクション余分に掛かりますけどね。あと魔法陣そのものはごく簡単で弱い効果しかありませんよ、基本はパスを通すための道具と思ってくださいね」

それにミーナさんが、クリップボードの取説を指差しながら丁寧に教えてくれる。うんうん、なんか良いな親切で分かりやすい。

「ま、自転車の補助輪みたいなものよね」

人がせっかく魔術が使える喜びに浸っているのに、遠坂がチャシ猫笑いで混ぜっかえす。

「むっ、良いじゃないか便利なんだから」

「士郎、便利で済ませちゃだめでしょ。それ使い切るまでにはパスのイメージ固めて、補呪具無しでも出来るようにならなきゃ」

「あ、遠坂は使わないんだ、これ」

「わたし? わたしはそんなものいらないもの。普通に魔術使えるし。使っても出来ることはワンアクション減らすか複合で魔術使うときの魔力節約くらいかな。それに結構高いんだからね、無駄使いしないでよ」

あ、そうなんだ。でもさ、いつも遠坂が使い捨てにしてる宝石よりは安いと思うぞ。
ミーナさんは広げたカードを揃え直すと、ケースに仕舞い俺に渡してくれた。トランプって二セットで一組なんだ、知らなかった。

「じゃ士郎さんよろしくお願いしますね」

続いて分厚い紙束を渡された。あの……よろしくって……これなに?
遠坂を見て、なに? と尋ねたがぷいっとしらばっくれられた。

「試用レポートです。一枚のカードに付き一枚。頑張ってくださいね」

はい? レポート? 一枚に付き一枚? うわぁこれ大変そう……て

「遠坂!」

「仕方ないでしょ! 買ったら高いんだから……」

むぅ――っと剥れながら怒鳴る遠坂。金がないのは絶対俺のせいじゃないぞ。
一方、見るからに毎度あり、て顔で満面の笑みを浮かべるミーナさん。商売人だったんですね。

「で? 感想は?」

とはいえ、まあ仕方がないと、紙束を小脇に抱えると、遠坂が何かえらく嬉しそうに聞いてきた。何が嬉しいのか、さっき俺がカードに魔力を通して以来ずっと機嫌が良い。

「なにがさ?」

「だから、魔術が使えた感想。衛宮くん初めてでしょ? その……剣関係以外で魔術使ったの?」

何が聞きたいのかが良く分からなかったが、何か大切な事を聞かれた事はわかったので、先ほどの気持ちを思い返す事にした。

ああっ……

何かいきなり世界が広がったような、そしてその先までどんどん進んで行けるような開放感。そうか、これが魔術師の喜びなんだな。
俺はようやく遠坂の聞きたいことの意味が分かった。
今まで俺が身に付けた魔術。強化、投影、そして究極の「固有結界」
それらは全てぎりぎりの緊張と危険の最中で身に付けたものだ。だが欲しかった訳じゃない、いつも絶対必要だっただけだ、絶対必要だから「身に付けるしかなかった」魔術だ。
だから喜びは無かった。安堵やこれで事態を解決できるという安心はあったが、開放感はなかった。

さっきのように魔術を使って嬉しかったのは初めてだ、世界が広がっていく喜び、その先までどんどん進めるだろうと言う開放感。
多分、これが「楽しい」と言うことなんだろう。

ああっ……

漸くわかった。遠坂が何でさっきからずっと喜んでいたのか。喜んでいるのになんでこんな不安げに俺を伺っているのか。
俺は遠坂凛が俺の隣に居ることに感謝した。そして、いつもいつもそのことに気付くのが遅れる俺の鈍さを痛感した。
俺は馬鹿だな、さっきこう言ってたら遠坂はもっと喜んだのに、こんな不安げにさせなかったのに。



「ああ、凄く楽しかった」



俺はその思いが遠坂に届くようにはっきりと言った。
途端、遠坂が凄く良い笑顔で笑い返してくれた。めったに見ることの出来ない、いつもの皮肉げな笑みとも、綺麗だけどとっても怖い笑みとも違う、遠坂凛という少女の本当の笑顔。涙が出るほど綺麗だった。



「ほらほら、いつまでも突っ立ってない。セイバーのとこ行くわよ。あの娘なにいつまで悩んでるのよ……」

余韻に浸る間もなくとっとと奥へ引っ込む遠坂さん。切り替え早いですね……
俺はもう少し頻繁にあの笑顔を見せてくれないかなぁ、と聖杯ですら叶えられないであろう願いを胸に、遠坂の後に続いた。


士郎君魔法を使うの話。
パスやら補呪具やらのアイディアは一昔前の洋物TRPGのシステムを参考に作成しました。
シュトラウス家の設定は士郎君への支援システムの為、および一部伏線です。
アイテムは強すぎず弱すぎずのさじ加減に苦労しました。やはり士郎君のレベルアップは「無駄な努力の積み重ね」であってほしいものです。

by dain

2004/3/6初稿

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