死体が転がっていた。
幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも
幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも幾つも
死体が転がっていた。
毒殺された死体が、絞殺された死体が、轢殺された死体が、斬殺された死体が
病死した死体が、 衰弱死した死体が、溺死した死体が、 焼死した死体が
死体が転がっていた。
丘の上に、草原に、林の中に、山の上に、道の上に、建物の中に
海の上に、海底に、池の中に、川の流に、潮の流に、井戸の底に
死体が転がっていた。
見渡す限り、そこには死体しかなかった。
わたくしはそれを見詰めていた。口は開けなかった、眼は瞑れなかった、耳はふさげなかった。
純粋な「死」が周り中に満ち溢れていた。
悲鳴も涙も出なかった。出させてもらえなかった。
何も出来ずに「死」に囲まれていた。
わたくしは魔術師だ、死とは物心ついたときから馴染んでいたはず。
でも……これは違う!
敗北の死、間違えての死、力及ばぬ死、全て覚悟していた。
死ぬことも殺すことも最初から覚悟の上。血の臭いのしない魔術師など半人前だ。
だったはずなのに……
圧倒されていた。膝が笑った。このままへたり込んで足を抱えて丸くなりたかった。
耳も眼も口も閉ざして、ただ、ただ外界の死から逃れたかった。
だがそれだけは出来ない。必死でこらえながらただ呆然と死を見据え続けた。
それだけしか出来なかった。
あかいあくま | |
「真紅の悪魔」 | −Rin Tohsaka− 第二話 後編 |
Asthoreth |
「こら! 起きろ! 金ぴか!」
耳がはじめて「死」以外の音を聞いた。何か腹が立つ。
「馬鹿! 能無し! ヘタレ! 半端者!」
どんどん腹が立ってくる。
「いい加減起きろ! この金満へっぽこ猫被り!」
「何ですって!」
頭の血管を数本ぶちきりながら、わたくしは目を覚ました。
「ようやくお目覚め? 最初は狸寝入りじゃないかと思ったわよ」
頭の上から些か乱暴な声がかかる。遠坂凛だ。わたくしとしては一言二言文句を行ってやらねば収まらない。顔を上げて睨みつけ、口を開けたところで言葉に詰まってしまった。
軽い口調とは裏腹に、遠坂凛は額に脂汗を貼り付けて呪いのブルーダイヤと対峙していた。掌で握り締めた宝石を磨り潰しながら、ダイヤにかけた防護呪を強化している。その忌々しいほどに気丈な姿に、わたくしも気を取り直して立ち上がった。
ゾクリ
悪寒が走る。何気なく周囲を見渡して悪寒の正体に気がついた。
死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体
この教室に集まっていた学生の死体。
毒殺された死体が、絞殺された死体が、轢殺された死体が、斬殺された死体が
病死した死体が、 衰弱死した死体が、溺死した死体が、 焼死した死体が
先ほどの夢がフラッシュバックする。夢の中同様、膝が笑う、表情が硬直する。
「なに呆けてんの? ……ああ、大丈夫。気を失ってるだけ。魔術師なんだから、いくら不意打ちでも死にはしないわ」
「ほ、呆けてなんかいませんわ!」
遠坂凛の言葉で呪縛が解かれた。表情は厳しいままであるが悔しいほどに落ち着いた声音だ。
「えらく落ち着いてますわね……」
「え? ああ、うん。こういうことに詳しくなっちゃった奴が居てね。おかげで慣れたけど」
微かに苦笑しながら気楽に言ってのける。だが、その言葉の裏側に垣間見えるものにわたくしの心が震える。多分この女は知っているのだ。これと同じような状況を。
“聖杯戦争の勝者”そんな言葉が脳裏に浮かぶ。口惜しいが、この女は実戦経験者なのだ。
「それより手伝ってくれない。防護呪の強化くらいボケてても出来るでしょ? わたしはその間にそこら辺に転がってる連中、邪魔だから片付けるから」
「ボケてなんかいませんわ! それに防護呪といったって人の魔術の強化なんか……」
「やっぱりボケてるじゃない」
そう言われて防護呪を見て少しばかり驚いた。わたくしの呪と遠坂凛の呪が絡み合い融合して発動している。
確かに斃れる直前に呪を放った記憶はあるが、他人の呪と打ち合わせなしで、こうまで綺麗に融合するのは初めての経験だ。よほど相性が良いのか……腹が立つので考えるのをやめた。悔しかったので憎まれ口を利いてやった。
「貴女は何故気を失わなかったのかしら? 確か私と一緒に飛び出したはずですわね?」
「ああ、わたしね。目の前に壁が立ってたんで遅れたの。ま、運が良かったのね」
そう言って視線で”壁”を示す。「真鍮」氏だ。
真正面からもろに呪いを受けたにしては安らかな寝顔で倒れている。なぜかこの男だけは、自分が原因の「事故」で死ぬ事だけは絶対に無いように思える。もしかしてなにか特別稀有な才能の持ち主なのかもしれない。
無性に不機嫌になったので、わたくしは「真鍮」
「あ、五大貴石は取っといて」
手早く手持ちの石で呪の補強をしようとしたわたくしに、遠坂凛の声がかかる。疑問に思い彼女の顔を見ようとしたが、その前に向こうが並べた手持ちの石で意図に気がついた。なんとも良い度胸だ。
「本気ですの? わたくし達だけで片付けるおつもり?」
「あら、レディルヴィアゼリッタ。貴女、こんな恥をかかされて黙って引き下がってしまうの?」
ぐっと詰まってしまう。どうしてこの女の話は腹の立つことばかりなのだろう。
「どの道、協会の呪術ではホープ・ダイヤの解呪なんて、それこそ大師父にでも帰って来てもらわなきゃ無理でしょ? だったらこの場でわたし達が片付けましょう。それとも貴女じゃ無理?」
黙って聞いていれば言いたい放題。自分でも額に青筋が立つのがわかる。
「馬鹿にしないでいただきたいですわ。ミストオサカ。それ位きちんとこなして見せますのよ。ただ力技というのが気に入らないだけ」
わたくしの応えに、遠坂凛は微かに口の端に笑みを乗せて頷いた。挑発に乗った上に、彼女の意図を正確に把握していることを伝えてしまったのだ。悔しさに思わず地団駄を踏みそうになる。
それで気がついた、もう膝は笑っていない。固まった表情は、猫までまとめてひっぺがされて百面相をさせられている。
……そのためなの?
わたくしは、しばし唖然と遠坂凛を見詰めてしまった。が、口には出せない、慌てて表情を引き締める。ここで口にしてはあの女に負けを認めることになる。
確かにここまでのアドバンテージは認めよう。だがこのままおめおめ主導権を奪われ続ける気は毛頭ない。一気に逆転して血の涙を流させてやる。わたくしはそう決意してぐっとお腹に力を込めた。
「手順は分かるわね」
遠坂凛は転がっていた学生達の始末を終えて帰ってきた。手際よく集めて防護陣で縛り付けてある。これなら多少乱暴な魔術を使っても怪我くらいですむ。「真鍮」氏だけが半ば防護陣からはみ出して見えるのは、たぶん気のせいだろう。
「ええ、わたくしが五大貴石で呪いをパスの中まで押し戻して」
「わたしが衝撃弾でダイヤを砕く」
手順としては実に簡単だ。現状はホープ・ダイヤという巨大な呪いのダムに穴が開いた状態で、そこに手を突っ込んでふさいでいるといった所である。呪いの貯水量の大きさから、すべて干上がらすことはまず不可能。であるならば、まだ穴が小さいうちに一旦水を押し戻して穴をきちんとふさげば良い。これからするのはそういうことだ
「レディルヴィアゼリッタ。石の貯蔵は十分かしら?」
「ミストオサカ。そちらこそわたくしに付いてこられまして?」
妙に息が合ってしまったのが悔しくて、お互い憎まれ口をたたきながら作業は始まった。
「――――En Garand
まずはわたくしの番、エメラルド、ルビー、サファイヤで防護呪の外側に対呪用の侵攻呪を編む。
「――――Prime
それをダイヤで補強する。だがこれだけでは足りない。
「――――Quarte
さらにその外側に真珠で浄化呪を乗せる。
「――――Quinte
そして遠坂凛とタイミングを合わせ防護呪が消える直後にブルーダイヤを通して、呪いのパスに殴り込みを掛ける。
「……くっ!」
額に汗が浮かぶ、唇をかんで体中を駆け巡る魔術の苦痛に耐える。ただ抑えるだけではなく、こちらから押し出すのだから、呪いの圧力は一桁跳ね上がってくる。
魔術刻印も自動起動し、陣の補強に全力を尽くす。じりじりと進む侵攻陣に合わせるように、煌々と輝く魔術刻印がさらに全身を苛む。
「――――Anfang
新たな輝きが現出した。遠坂凛が魔術を編み始めたのだ。ヘマタイト
ついにダイヤの向こう、パスにまで侵攻陣が到達する。後はブルーダイヤを砕くだけ。
「――――Der Fortsetzung
遠坂凛が術式を解放する、魔弾の嵐がブルーダイヤを襲う。これで決まりだ。
ったはず……
「だぁ―――――っ! あの大馬鹿! 天災馬鹿!」
「どうしてあの男は、こうも禄でも無い事ばかりに凝るの!!」
遠坂凛とわたくしの罵声と怒声がかさなる。
遠坂凛の魔弾が発動されるとほぼ同時に、まるでこれを待っていたかのように、ブルーダイヤの周りを飾った16個の小粒のダイヤが続けざまに弾け、襲い掛かる魔弾を次々と対消滅させたのだ。
あの愚か者は、何故ただのイミテーションにここまで凝った仕掛けを仕込んでいたのだ? いったい何を考えているのだろう? これは解呪のデモンストレーション用のはず、そんなものに何故護衛陣? しかも計ったように対衝撃。
いつもはどんな術式でさえ満足に組めない男の術式なのに、ここぞとばかりに炸裂する。よくもここまで明後日の方向に全力で突っ走れるものだ。思わずガンドをあの男に叩きつけたくなった。
「……っ!」
遠坂凛が唇をかむ。下手な小細工をされたため、ブルーダイヤを殴りつける魔弾の数が足りなくなってしまったのだ。このままではあのダイヤは砕けない。
「ミストオサカ! 手なはいの?」
「あ、ある事はあるんだけど……」
遠坂凛は、なにか妙に場違いな戸惑いを見せる。視線が泳いでばつの悪そうな表情。彼女らしからぬ顔だ。
「だったらとっとと仕掛けなさい! 何を躊躇していらっしゃるの!」
「あ――っ、もう! 金持ちにはわかんないわよ! わたしの気持ちなんて!」
わけの分からない罵声を飛ばしながら、遠坂凛は断崖絶壁から飛び降りるかのような表情で切り札を放った。
「ええい! 取って置き! 「偽金」
巨大な光が教室一帯を包む。真紅と真翠、二つの激流が渦をなして乱れ弾ける。
アレクサンドライト
「――――Der PanzerFaust
そこに最後の衝撃弾。ブルーダイヤは砕け散り、最大級の呪いの穴は、わたくしの侵攻陣もろとも再封印された。これで終わりだ。嵐の後の静寂が教室を包む。わたくし達の魔術刻印も輝きを収め、息遣いも整っていく。
これが映画や物語ならここでほっと一息をついて、反目しあった二人に友情でも芽生えたりするのだろう。そして共に戦った戦友として、肩でもたたきあいENDマークに続くところだ。
しかし、わたくしはあの女をむっとばかりに睨みつけていた。あの女も憮然とした表情で不貞腐れている。
「ミストオサカ……」
「なによ、文句ある?」
「この惨状、いったいどういう訳かご説明願えますかしら?」
わたくしは教室の惨状を指し示しながら毒づいた。
そこは見事に半壊していた。最後のアレクサンドライトの奔流がブルーダイヤに対してだけでなく、教室中を暴れまわった為だ。術式を編んでいたわたくし達でさえ髪の端や服の裾が少しばかり焦げたり凍ったりしている。顔だってすすだらけだ。防護陣の中の間抜達も大なり小なり怪我をしている。何故かただ一人、半分防護陣からはみ出しながら「真鍮」
「しょうがないじゃない。半年分の魔力を溜め込んだ一番高い宝石だったんだから。精度なんて上げてらんないわよ」
遠坂凛が何故か涙目で叫ぶ。“半年分の魔力”より、“一番高い”にアクセントがこもっていたように思えるが気のせいだろう。
「威張らないでいただきたいですわ。ミストオサカ。力と精度の両立こそが一流の証ですのよ」
「あら、レディルヴィアゼリッタ。最初に気を失われたのは何処のどなただったかしら? 不意打ちに対して即座に対応するのも一流の証ですものね」
「そ、それとこれとは話が別ですわ!」
「ええ、別でしょうね。きっと膝が笑ってらしたのも別の話なのですわね」
いかにも人を見下した視線であの女がほざいた。ああ、先ほどは勇気と気概、幾分認めようと思っていたが、あれは気の迷いだった。この女やはり許すことが出来ない。
やはり
――遠坂凛はルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトの不倶戴天の宿敵である――
わたくしはふらりと立ち上がった。手には残りの宝石を掴み、視線はあの女から一時も離さない。
それに呼応するようにあの女も立ち上がる、手にはやはり宝石、わたくしを睨み返してくる。
「ミストオサカ。ここはやはり一流の魔術師としての証を立てなくてはいけないようですわね……」
「ええ、レディルヴィアゼリッタ。やはり一番大切なのは実戦による証明ですもの……」
互いに手袋を投げつけ合う。
「――――Anfang
「――――En Garand
半壊の教室が、何故か終わってみれば全壊していた。
どうしてそうなったかなど、わたくしにはちっとも分からなかった。
人生の終わりを迎えるに当たって最後の瞬間、それまでの人生が走馬灯のように思い浮かぶという。
なのに、わたくしが思い出すのは遠坂凛のことばかりだ。無性に腹が立つ。
しかし、今のわたくしはすでにからっぽ。怒る気力さえ沸いてこない。
失敗だったかもしれない。たった一人でこんなことに挑むのは無謀だったのだろう。
だが、後悔はしていない。わたくしは魔術師だ、一人で生き一人で死ぬ。その覚悟はとうについている。
立ち上がる力も失せ、意識も霞んできている。もうダメかもしれない。最後まであきらめるつもりは無いが、奇跡も期待はしない。
ああ、
ああ、でも最後にあの顔を見たい。
由緒正しい名門の伝統も、僻地の出来星も関係ない。エーデルフェルトと遠坂の過去の因縁でさえ何の意味も無い。
それは、わたくしと遠坂凛の存在そのものに関わるもの。
あの時の遠坂凛にあってわたくしに無かったもの。
あの時の遠坂凛の強さの秘密。
そして何よりも遠坂凛に分不相応なもの。
「……シェロ……」
ようやくそれを見つけたというのに、ここまでなの?……
「こら! 馬鹿! なにやってんだ!!」
ああ、今こそ神に感謝しよう。たとえ幻聴でもシェロの声を聞かせてくれたのだ。
「なにブツブツ言ってるんだ! 馬鹿! しっかりしろ!」
どうせ幻聴ならもっと優しく艶っぽい台詞を聞きたかったのだが、この幻聴は容赦が無い。
「ああ、もう。引っ張り起こすぞ!」
闇に引きずり込まれる一瞬前、シェロの逞しい腕がわたくしを奈落の底から引き上げてくれた。
「シェロ……」
「ルヴィア……」
わたくしが一目見たかった優しい顔が目の前にある。
キュルルルル
嬉しさのあまり、極度の空腹だったわたくしのお腹が鳴ってしまった。
「馬鹿!」
今日何度目だろう。俺はルヴィア嬢に罵声を飛ばした。
「だって……」
毛布に包まり俺が作ったおじやを上品にかっ食らいながら、ルヴィア嬢が可愛らしく口を尖らす。
「だってじゃない! 家ならともかく学院で三日篭り切りなんて自殺行為だぞ、そういうのを馬鹿って言うんだ」
「い、家に帰る時間が惜しかったんですわ」
上目遣いで恨みがましく睨んでくる。睨まれたって、ほっぺにご飯粒くっつけているような腹ペコルヴィアなんか怖くは無い。今回の件は間違いなくルヴィア嬢が悪い。あまりに不注意だ。ちっとも怖くないぞ。……後でちょっと怖いかもしれないけど。
俺がこうしてルヴィア嬢の工房でおさんどんをしているのは、シュフランさんからの一本の電話が発端だった。
日曜の午後、シュフランさんから俺に連絡が入った。金曜の夕方に、今日は学院に泊り込むと連絡があったきり音沙汰が無いという事だ。相変わらずの声音だったが、微かに焦燥の色が覗いていた。俺は思い当たるふしがあったので真っ直ぐルヴィア嬢の学生工房へ急いだ。
いかに魔術師の執事とはいえ一般人は学院には入れない。同じ魔術師だって他の魔術師の工房に、そこの主に断りなしには入れない。幸い俺はルヴィア嬢の従者で魔術師という立場だったので出入り自由のパスを貰っていた。
そしてルヴィア嬢の工房に飛び込むと案の定、生死の境をさ迷っているルヴィア嬢を見つけたというわけだ。
で今、餓死寸前のルヴィア嬢におじやを食わせてやっている。もちろんその為の材料も持参してきた。用意に抜かりは無い。
「魔術師だって食わなきゃ死ぬんだぞ!」
こんな機会めったに無いから、もう一発怒鳴りつけておく。
まったく……どうしてお前らは俺が怒るとそのわたし悪くないもん、て顔をするんだ!?
ルヴィア嬢は言い返すかわりに、膨れっ面で茶碗を差し出しお代わりを要求した。
俺がルヴィア嬢の状況を正確に把握していた理由は簡単だ。丁度一週間前に遠坂が同じ事をした。ただそれだけ。理由も一緒、つまり先週は遠坂がルヴィア嬢にへこまされていたわけだ。
……君たち、相手にへこまされたからって、飢餓境界線まで工房に篭るってのはどうかと思うぞ。
「でもな、遠坂といいルヴィアさんといい。間抜な行動パターンまで似ること無いだろ?」
俺はおじやをよそった茶碗を渡しながら愚痴った。君たち、本当はどっかで血の繋がった双子じゃないのか?
「リンと一緒にしないでほしいですわ! それに間抜ってなんですの!」
ガツガツコクンと口の中身をしっかり飲み込んでからルヴィア嬢が怒鳴る。お行儀が良いのか悪いのか良く分からない所作だ。なんか見ていて飽きない。俺は思わず微笑ってしまった。
そんな俺をむぅ――っと睨みつけながら、ルヴィア嬢はおじやをかっ込み続けている。
きっと遠坂とルヴィア嬢の関係は一生変わらないのだろう。意地っ張りで傲岸不遜で美しく、才知溌剌の癖に間抜で綺麗なお人よしの魔術師二人。俺も多分、こんな二人と一生付き合うことになりそうだ。
だって
――遠坂凛とルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトは終生の宿敵
のだから。
END
きんのけもの 第三話の裏バージョンともいえる作品です。
かなり苦労しましたが二人とも猫を被るのやめたとたんに動き出してくれました(笑)
まぁこんなことばかりしてちゃ凛様お金溜まらんわなという話。
後半では何故か一言も台詞が無いくせに「真鍮」君がキャラ立ちしてくれました。
でも最後を締めるのは士郎君。主人公ですから。
さて、実はhollowのルヴィア嬢関係の文章を読み返しながらこれを改稿したのですが、その際一つの仮説が浮かび上がってきました。
hollowでの新事実。エーデルフェルトは本来は姉妹の魔術師である。
尤も今現在のルヴィア嬢には姉妹のいる形跡は無いので、恐らくエーデルフェルト家が関わった第三回聖杯戦争の折、妹を失ったことでその系譜は絶たれたのでしょう。
そしてもう一つ。遠坂凛がクォーターである事。つまり恐らく祖母ちゃんが外国の人。
これについてはいずれ、何か一つの物語に編み上げるつもりです。
by dain
2004/3/24初稿
2005/11/05改稿