――東風吹かば にほひおこせよ唐桜 主なしとて春をわするな――

風が吹いた。
遠い思い出がよみがえる。
幾重にもよみがえる。
幾人もの“主”が訪れ、佇み、去って行った思い出。
時には長く、時には瞬くようなわずかの間、過ぎ去っていった“主”たち。
たとえ彼にとって仮初めの“主”に過ぎずとも、
忘れはしない。忘れる事は出来ない。
ならば果たさねば成らぬ。
思い出を黄泉返らせねばならない。

月明かりを浴び、今、華は開いた。





きんのけもの
「金色の魔王」  −Rubyaselitta− 第十一話 後編
Lucifer





「……漸く……片付きました……」

すっかり日も暮れ、月明かりに淡く浮かび上がる座敷の真ん中で、セイバーの疲れ果てながらも、満足感に溢れた呟きが零れ落ちた。

「ご苦労様、セイバー」

「セイバーさん、はい、お茶です。一服つけてください」

そんなセイバーに、俺と桜がお疲れ様と声を掛ける。

「風呂も沸かしといたぞ、一番風呂はセイバーが入ってくれ」

「有難うございます。苦労した甲斐がありました」

ほっと溜息をついて風呂場に向かうセイバーの背中を見送りながら、俺は屋敷を見渡した。
塵一つ落ちていない座敷、ぴかぴかに磨き抜かれた廊下、春の日差しをいっぱいに浴びて、ほこほこと暖かそうな布団。みんなセイバーのおかげだ。

「それじゃわたしはお夕食の支度をしてきますね」

続いてセイバーさんも大変ですねと苦笑しながら、桜が立ち上がった。

「おう、桜悪いな」

「良いんですよ、先輩。先輩は見張りのほうをお願いしますね」

桜の苦笑交じりの返事に、俺も苦笑で答えながら頷いた。本来なら俺も手伝いたい所なんだが、そうも言っていられない事情があったのだ。、

「でも、日本家屋って、ちょっと殺風景よね。家具が全然ないし」

「裏の蔵に面白そうなチェストが幾つかありましたわ。足が短いですけど大きなテーブルも」

こいつらがその事情。さっきからパタパタと屋敷中を忙しげにほっつき歩く美女二人。なにやってるんだか分からないが、放っておくとまた散らかしかねない。だから俺と桜で見張っていたわけだ。

「やっぱり作業台は要るわよね、それに小物を入れる引き出しとか」

「飾り箪笥って言うのかしら? 鋳物の金具が付いた沢山引き出しのあるチェストもありましたわ。中のものを出してあれを使いましょう」

「そうね、じゃ早速……」

「こらっ」

言ってる傍からこれだよ。俺はそのまま蔵に向かおうとする二人の襟首をとっ捕まえた。

「なによ?」

「なんですの?」

「折角セイバーが片付け終わったんだぞ、また散らかすな」

セイバーが居なくなった途端に蠢き出しやがって。お前ら小学生か。

「別に散らかすつもりは無いわ。ちょっと家具を見繕うだけよ」

「そ、そうですわ。魔術師なんですもの、工房とは申しませんけれど、それなりの作業場は作っておきたいと思っただけですのよ?」

実にもっともらしい言い訳だと思うが、それならなぜ俺の目を見ない? 何で風呂場をちらちら見てセイバーを伺うんだ?

「駄目だ。セイバーが帰ってくるのを待て」

「で、でもそれじゃ夕食後になっちゃうじゃない。セイバーの折角の楽しみの後に、仕事なんかさせたくないじゃない」

「これ以上セイバーに頼るのも、如何なものかと思っただけですわ。昼間はあれだけ頑張ったんですもの、夜はゆっくしして頂きたいじゃありませんの」

ああ、ああ、君達のセイバー思いの心はよっく分かった。でもな、それなら風呂上りのセイバーに惨状を見せるのは良いのか? 
俺は、可愛らしくお願いっと小首を傾げてくる二人を、断固として睨み付けた。

「駄目だ」

「じ、じゃ士郎が一緒に来ればいいじゃない。それなら安心よね」

「士郎が見張っていてくだされば、わたくし達だってそんな無茶はしませんわ」

つまり俺が居なけりゃ散らかしてたって事か? 間違った事したら反省するんじゃなかったのか? まったく。

「じゃあ、見るだけだぞ。持ち出しはセイバーが風呂から上がった後だ、良いな?」

とはいえ、このままだとこの二人、隙あらば散らかそうとするだろう。なら、俺が付いていって最悪の事態を避けるほうが合理的だ。

「有難う、士郎」

「助かりますわ、シェロ」

素直に可愛らしくこくんと頷く美女二人。いつもこうだったら楽なんだが……。
なんかセイバーが聞いたら“シロウは甘い……”とか言われそうではあったが、ともかく俺は妥協して二人に付いて行く事にした。




「お前ら……」

というわけで、連れだって蔵の前まで行ったところで、俺は二人を睨み付けた。

「わ、わたしじゃないわよ!」

「わ、わたくしでもありませんのよ!」

「他に誰が居るって言うんだよ!」

蔵の扉は開けっ放し、更に中を覗けば、櫃や箱から中身があふれ出し、引っくり返ったおもちゃ箱状態なのだ。

「わたくし達だって、ここまで無茶はしませんわ!」

「士郎、そりゃわたし達は片付けは下手よ、でもこんな風に唯ひっくり返すだけなんてしないわよ!」

「むっ」

確かに、二人とも自分ルールで物をしまうわ、後先を考えずに欲しい物だけとっとと取り出すようなところはあるが、ただ散らかすために散らかすような事はしない。単に段取りが悪いだけなのだ。

「じゃ一体誰が?」

「ポ、ポルターガイストとか……」

「Eマイナスだろ? ここまで派手なの出るのか?」

Eマイナスじゃ、せいぜい茶碗が割れたり箸が転がる程度だ。こんな蔵中、目いっぱい引っ掻き回すような力は無い。かといって、

「泥棒にしたって変だぞ」

泥棒ならもっと金目のありそうなところを狙うだろう。こんな古道具しかないような蔵、引っくり返したって仕方が無いはずだ。

「泥棒は無いわよ。一応ここは魔術師の家なのよ、近づく気さえ起きないわ」

「そうですわ。もし万が一泥棒が入ってきたとしても、すぐ分かりますもの。ちゃんと結界だって……」

と、遠坂共々口を尖らせて文句を言いかけたルヴィア嬢だったが、そこまで言うとふと黙り込み、微かに眉を顰めて考え込んでしまった。

「どうしたのよ?」

「どうしたもこうしたも、リン。貴女は感じませんの?」

「感じるって……え?」

そんなルヴィア嬢に訝しげに声をかけた遠坂だったが、険しい表情で応るルヴィア嬢の声を聞いた途端、驚いたように周囲を見渡しだした。

「なにこれ? Eマイナスなんてもんじゃないわよ」

「ええ、結界も内側から別の結界に塗りこめられてしまってますわ。何ですのこれ?」

「ちょっと待て、じゃあ今ここは……」

「――っ!」

と揃って息を呑んで顔を見合わせたところに、更に厨房の方向から悲鳴のような声が響いてきた。

「桜の声?」

「今、サクラは一人でしたわね?」

「拙い、急ぐぞ!」

どうやらこの屋敷で、おかしなことが起こり始めているって事は確かなようだ。俺たちはともかく、一人厨房に居るはずの桜の元に走った。




「桜! 無事か!」

「せ、先輩」

厨房に慌てて駆け込んだ俺は、桜の応えを聞いて取り敢えずほっと息を付いた。
厨房の隅、蠢く陰に囲まれて呆気にとられたような表情でへたり込んではいるが、怪我をした様子も無い。よかった、無事だったんだな。

「酷いわね、無茶苦茶じゃない」

「サクラ、一体何がありましたの?」

ただ、その陰に囲まれた一角を除いて、厨房は先ほどの蔵同様に、調理道具に食材がそこいら中に散らかされ、思い切り引っ掻き回された状態だった。

「それが、いきなり強い風が吹いて勝手口が開いたと思ったら……」

遠坂達に促されて口を開いた桜によると、吹き込んだ風はそのまま厨房中を舞い狂い、棚という棚を開けて調理道具や食材を撒き散らしだしたのだという。

「よく無事だったな」

俺は改めて厨房を見渡してちょっとぞっとした。包丁やナイフ、それにでかい中華鍋までが手当たり次第に飛び散っている。こいつが桜に当たったら、下手をしたら怪我じゃすまないぞ。

「はい、この子達が守ってくれました」

漸く我に返ったのだろう。俺の言葉ににっこり応えると、桜はわきわきと蠢く陰に愛おしそうな視線を送り、撫でる様に手を差し伸べる。

「そ、そうか。お前らよくやったぞ」

そんな桜に応えるように、低い羽音でのどを慣らすような音を立てて騒めく陰に、一瞬引きかけた俺だったが、そういう事ならと、俺も思い切って手を差し伸べてみた。

―― 斜!――

「うわぁ!」

と、いきなり噛み付かれかけた。

「先輩、無理しなく良いですよ。結構焼きもち焼きなんですこの子達」

そんな俺の醜態を見て、桜はくすくす笑いながら陰を身に引き戻す。別に嫌だってわけじゃないけど、やっぱりこいつらは苦手だなぁ。

「士郎、遊んでるんじゃないわよ。それより桜、何か気がついたこと無い?」

「かなりの魔力が残っていますわ。ただのポルターガイストでは無かったのではなくて?」

と、そこにそれまで険しい表情で荒れ果てた厨房を見渡していた遠坂とルヴィア嬢が、はいはいとばかりに割って入ってきた。別に遊んでいたわけじゃないんだがな。

「そうですね……なにか、紙吹雪みたいなものが舞ってました。あ、それとお酒を持って行かれちゃったみたいです」

どこか不機嫌そうな二人を前に、少しだけ名残惜しそうな視線を俺に向けていた桜だったが、小さく溜息をつくと少し考え込みながら話しだした。

「紙吹雪?」

「お酒?」

意外な言葉に、顔を見合わせる遠坂とルヴィア嬢に、桜は更に言葉を続ける。

「はい、この子達が出てくると、なんだか慌てて引き上げちゃったんで、よく見ては居なかったんですけど。ほら、勝手口のところに放り出した酒瓶が残ってますよね」

成程、確かに割れた一升瓶が転がっている。しかし、何で酒?

「紙吹雪は? 見当たらないけど」

「風と一緒に全部引き上げちゃったみたいなんです。だから、本当はなんだったかまでは分からないんです」

「おそらくそれがこの怪異の触媒ですわね」

桜の話を聞き終わって、ルヴィア嬢が難しい顔で口を開いた。結局よく分からないながらも、何かがその紙吹雪のようなものを使って、厨房を荒らして酒を持っていったということらしい。

「蔵の方もそいつかな?」

「立て続けに同じような事が起こったんだもん、多分、あっちも同じやつよ」

「一体なにもんなんだ?」

「結界は内から乗っ取られてるんだっけ?」

「ええ、ですから元々この屋敷に有ったものに因があるはずですわ」

いきなり現れて、蔵や厨房を荒らしまわる謎の怪異。今のところ被害は無いとはいえ、時計塔もここをEマイナスに査定してたって事は与り知らぬことだろう。

「で、どうするんだ?」

つまりはこの屋敷は、時計塔きょうかいも把握してなかった一級の幽霊屋敷だったって事だ。そんな物件を買ってしまったルヴィア嬢には悪いけど、ここはひとまず……

「嘗てはいざ知らず、今ここはわたくしの家。不法滞在者は、当然見つけ出してお引取り頂きますわ」

「そうね、人に濡れ衣着せてくれて……とっとと追い出してやりましょう」

二人揃って腕組みをし、不適な笑いを浮かべて臨戦態勢に入っておられます。
喧嘩っ早いというか、見敵必戦というか……そりゃやられたらやり返すってのはわかるが、もっと穏便に行こうって気は無いのか?

「穏便ってどうするのよ?」

「そりゃ、その……話し合いとか」

「誰とよ? 顔も出さないようなやつは実力行使されて当然じゃない」

「話し合うにしても、まずは引き摺り出して頭を下げさせてからですわ」

そう思って口にした途端、お二方から一斉に睨まれてしまった。誰に喧嘩売ったか、まず教えるのが先決だとおっしゃる。

「まぁ確かに、まず原因を探り出さなきゃとは思うが」

「そうよね。そうと決まれば早速、この怪異の因をとっ捕まえないとね」

「肝心の紙吹雪はありませんけれど……そのお酒のボトルを持っていこうとしたのですよね? でしたら何か繋がりが残ってるかもしれませんわ」

「じゃまずそこから調べましょ。桜、あんたも手伝いなさい」

「あ、はい」

結局なし崩しに、話は幽霊屋敷退治に進んでいく。
そりゃおかしな霊だったら困るけど、やっていることは遠坂たちと大差ないような気がする。そんな大騒ぎするほどの事も無いとは思ったが、いつの間にか俺もこの騒動に巻き込まれていった。

「どうだ? 何か分かったか?」

「それが妙なのよね」

「直接な残留物はありませんけれど、これだけ色々な品に感染しているのに、場所が特定できないんですの」

魔術の基本は感染と類感。だからその物の一部や触れた物からはラインを辿る事が可能なのだが、その行き着く先がどうにもばらけて収束しないのだという。

「庭を中心に、敷地内のほとんどにラインが繋がってるのよ」

「かといって建物からはさほどの霊格は感じませんわ。特に霊脈があるわけでもなし、どうなっているのかしら?」

少なくとも、今現在この屋敷の敷地内には何かが居る。それだけは間違いないらしい。ただ、それがどうにも手繰り寄せられないのだと言う。

「仕方ないわね、本格的にやる?」

「ですわね。このままでは気味が悪すぎますわ」

そんな隔靴掻痒な状態に痺れを切らしてきたのか、とうとうとても気が長いとはいえないお二人が、微妙に青筋を浮かび上がらせながら厨房の床に本格的な魔法陣を描くべく、手持ちの宝石を総浚えして砕きだした。

「おいおい、そこまでやるのか?」

「当たり前ですわ」

「ここまで虚仮にされたのよ? 誰に喧嘩売ったのか、思い知らせてやら無きゃ気がすまないじゃない」

いつもの事だが、段々と手段と目的が混同してきたぞ。拙いな。これは止めた方が良いかも知れない。……ちょっと怖いけど。

と、俺は同じように呆気にとられている桜と顔をあわせ、腹を決めて二人に声をかけようとした。
その瞬間だ。

「これは……何事ですか――――っ!」

「へ?」

「なに?」

座敷から凄まじい怒声が飛んできた。

「セイバーさん……ですよね?」

「……すっかり忘れてたぞ」

一瞬呆気に取られた俺たちだったが、次の瞬間、全員の顔色が変わった。
拙い。もし座敷でもここや蔵のような出来事が起きていたら……
それこそ王者の怒りが炸裂するだろう。ここのおかしな怪異なんぞより、よっぽど恐ろしい脅威が顕現しちまうぞ。

「と、とにかく急ごう」

俺たちは、それまでの暴走や憂いをすっかり置き捨てにして、脱兎のごとく厨房を抜け、競争するように座敷に向かって駆け出した。




「凛! ルヴィアゼリッタ! これはどういうことです! 私がどれほど苦労して片付けたか……マスターといえども、もう許せません!」

と、座敷に行きつくまでも無く、母屋に飛び込んだ途端。完全武装のセイバーが、渦巻く風を背に受けて怒髪天で立ち塞がってきた。うわぁぁ! 待てセイバー。宝具エクスカリバーは拙い、宝具エクスカリバーは!

「待って、セイバー。誤解よ!」

「そ、そうですわ。わたくしたちのせいじゃありませんのよ?」

一瞬、足がすくんでしまった俺と違って、必死で言いつくろうとするお二人。流石だとは思うが、今それを言うのは拙いぞ。

「成程、言いたい事はそれだけですか?」

二人のそんな台詞を、一旦は気を収めて大きく頷きながら聞いていたセイバーだったが、にっこりと綺麗な笑みを浮かべると、一転怒涛の咆哮を叩きつけてきた。

「そんな下手な言い訳がいつまで通じると思っているのですか! もう聞き飽きました! いい加減になさい!」

「こ、今度は本当なんだってば!」

「ご、誤解ですわ!」

「貴女方には一体いくつ本当があるのですか! 誤解も六回もありません! 仏の顔も三度まで、もう勘弁成りません、そこになおりなさい!!」

駄目だ、取り付く島が無い。二人揃ってわたし悪くないもんって顔をして火に油を注ぐもんで、益々セイバーは激昂していく。だからそういう言い訳は拙いって言ったのになぁ。
とはいえこのままじゃ、本当に遠坂とルヴィア嬢の首が飛びかねない。俺は桜と顔を合わせて、腹を括る事にした。

「だから、わたしじゃないっ! もがっ!」

「待て、セイバー本当なんだ。こっちで何があったか知らないが、遠坂達は俺たちと一緒だったんだ」

「ですから、わたくしでっ! むぐぅ!」

「そうですセイバーさん、本当なんです。姉さんやルヴィアさんじゃないんです」

そのまま後ろから、桜と二人で遠坂とルヴィア嬢の口を塞いで取り押さえ、俺たちは必死でセイバーに事情を説明した。

「シロウ、桜。わかっているとは思いますが、余りふざけた事を言うとこの二人と同罪ですので」

「わかってる。とにかく話を聞いてくれ」

「そうです、セイバーさん。わたし達を信じてください」

こうして何とかセイバーを落ち着かせ、俺たちは漸く、先ほどの蔵や厨房での出来事を話す事が出来た。

「……蔵や……台所まで……」

途端、顔の上半分を前髪に隠して、ぐらりと上体が揺れだすセイバーさん。

「待て、セイバー。いいか? 遠坂やルヴィアさんは関係ないんだぞ。そこのところ間違えるなよ?」

「わかっています。わかっていますが……わかる自分が恨めしい……」

ぐらりと揺れた上体をぐっと堪え、セイバーさんは歯を食いしばりながら、いっそ凛やルヴィアゼリッタのせいならば楽になれたのに……これでは生殺しです、なんて物騒な事を呟いていらっしゃる。セイバー、気持ちはわからないでもないが、それって八つ当たりだぞ。騎士王様も随分とこっちの世界に染まってきたなぁ。

「それはそうとセイバー。そっちでは何があったんだ?」

漸く落ち着いたところで、俺はセイバーに尋ねてみた。座敷で何が起こったのか大体の察しは着くが、具体的にどんな事が起こったかは、セイバーのご乱心のせいですっかり後回しになってしまっていたのだ。

「はい、実はお風呂から上がって。よい気持ちで夜風にでも当たろうと座敷に出たのですが」

すっかり雨戸がはずされ、月明かりに照らされた座敷を見て愕然としてしまったのだそうだ。

「花びら?」

「はい、母屋の座敷といわず廊下といわず、一面に小さな花びらが撒き散らされておりました……」

なもんでセイバーは、折角綺麗に掃除をしたというのに、今度は一体どんなお馬鹿を仕出かしたんだと、プッツン行ってしまったのだそうだ。

「わたし達、別に散らかしてるわけじゃないわよ……」

「そうですわ。ただ必要なものを取り出そうとすると、何故か余計な物まで出てきてしまうだけですのよ?」

だから、そういう屁理屈捏ねるからセイバーが怒るんだぞ。見ろ、また青い陽炎が立ち昇り始めたじゃないか。

「花びら……まだ残ってるんですか?」

仕方が無い、平和の為にもう一度取り押さえるか。そう思って立ち上がったところで、桜がセイバーに向かって不思議そうな顔で問い掛けた。

「あ」

「あ」

途端、セイバーに睨まれて膨れていた二人の顔が間抜け面に取って代わられた。

「遺留品?」

「というよりも、まだそこに居るのではなくて?」

「セイバー説教は後だ、行くぞ!」

「はいっ!」

一瞬、顔を見合わせた俺たちは、全員一斉に立ち上がり、花びらが散っているという座敷に向かって駆け出した。




「シロウ! 避けて!」

「え? どわぁ!」

先頭を走るセイバーの後を追って、座敷へ通じる廊下を曲がったところで、俺はいきなりセイバーに蹴り飛ばされた。くそっ、最近セイバー遠坂がうつったか乱暴になったぞ。

「な、なによ、これ!?」

「マ、マットレスのダンス?」

「凛、ルヴィアゼリッタ! 貴女方も下がって!」

更にセイバーは、続いて飛び込んできた遠坂とルヴィア嬢が呆気にとられているのに舌打ちすると、素早くその前に身を躍らせ、襲い掛かる障害物を真っ二つに切り捨てた。

「シロウ。早く立ち上がってください!」

ついでに未だ倒れている俺に、とっとと立てとありがたいお言葉が飛んで来る。なんか差別を感じるのは気のせいか?

「わかった、しかし、こいつらなんだ!?」

とはいえ、セイバーの言うとおり何時までも寝転がってはいられない。俺はどうにか立ち上がると、両手に剣を投影した。

「わかりません。私が来た時には既にこの状態でした」

セイバーの応えを聞きながら、俺は取り敢えず襲い掛かって来る畳の嵐に立ち向かった。そう、今ここで暴れまわっているのは、座敷に敷き詰められていた畳なのだ。その畳が月明かりの中、座敷中を暴れまわる旋風に乗せて、大量の白い花びらと共に舞い踊っている。
嫌、違う。白じゃない、この花びらは……

「……桜?」

「はい?」

「あんたじゃないの、この花びらよ。これって桜じゃない」

そう、桜だ。薄いピンクの桜の花びらだ。遠坂姉妹のどこか間の抜けた会話は脇において、俺は視線を開け放たれた雨戸の向こう、庭の外れにまで延ばした。この屋敷で桜なんてのは……

「うわっ……」

思わず俺は今の状況を忘れて見惚れてしまった。
月明かりを浴び、仄かに浮かび上がっているのは、その枝という枝に満開の桜を咲かせた染井吉野の老木。風に乗ってそよそよと散る花びらが、周りに飾られた雪洞ぼんぼりの灯りに照らされて、まるで雪のように舞っている。

「え?」

それで気が付いた。月明かりだけじゃない。染井吉野の老木の周りには、雪洞が立ち並び、茣蓙ござが、畳が敷き詰められ、更には薦被りや角樽が所狭しと並べられている。まるで、これから夜桜を肴に花見でも始まりそうな雰囲気だ。

「シェロ! 何をぼんやりなさっているの!? ……え?」

そんな状況に目を奪われていたら、今度はルヴィア嬢に突き飛ばされた。おかげで畳の直撃は免れたが、代わりに今度はルヴィア嬢の方があの光景に目を奪われてしまったようだ。くっ、拙い!

「きゃ!」

「ルヴィアさん!」

「ルヴィアゼリッタ!」

そのまま狙い済ましたかのように襲い掛かる畳に囲まれ、更に舞い散る花びらに包まれたかと思うと、ルヴィア嬢は風に乗って桜の老木の許へと運び去られてしまった。

「士郎! なによあれ!?」

「わからない。でも多分、あの桜が元凶だ」

恐らくあの雪洞や茣蓙は蔵から、角樽や薦被りは厨房から運び去られた物だろう。そしてこの座敷から畳とルヴィア嬢。何を考えているかはわからないが、あいつがルヴィア嬢が言っていた因って奴なことは間違いないだろう。

「成程、あの木が犯人だったのですね」

「そうか……根ね。この敷地一杯に張り巡らしてるってわけ」

「酷いです。わたしの子達は桜の木になんか集らないのに……」

「解説は後だ。とにかくルヴィアさんを助けなきゃ。行くぞ!」

まるで用事は済んだとばかりに嵐の収まった座敷で、俺は漸く桜の老木に気がついた三人に声をかけると、真っ先かけて座敷から飛び出し、縁側を蹴った。

「先輩! 危ない!」

途端、俺の足が地に着く間もなく、地面を突き破って鋭い桜の根が襲い掛かってきた。
拙い! 足場の無い空中じゃどうしようもない。

「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!」

手足の一本くらいはと覚悟を決めて身を丸めた次の瞬間。俺は何か黒々とした物がざわざわと蠢く孔に落ち込んでいた。うわぁ、口に、鼻に、耳に……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

「ぁぁぁぁぁぁあああっ! あれ?」

「先輩。大丈夫ですか?」

「士郎、しっかりしなさい!」

わずか一瞬。だが気も狂わんばかりの刹那の後、俺は座敷で遠坂と桜に助け起こされていた。そ、そうか、桜が助けてくれたのか……それはとても有難いんだが、今度はせめて一声かけてからにしてほしいぞ、危うくとても恥ずかしい事をしかけちまった。

「お、俺は良い。それよりルヴィアさんは?」

とはいえ、今は俺の事よりもルヴィア嬢だ。俺は涙と鼻水と涎を振り払い、もう一度庭の桜に視線を戻した。

「あのへんてこな桜の根元よ。庭中おかしな根っこだらけでちょっと厄介だけど」

それに遠坂が、庭先を睨み据えながら何か考え込むように応えてくれた。確かに、屋敷から桜の木に至るまでの庭は、まるで大蛇のように蠢きのたくる根っ子に覆われている。
ただ桜の木の周囲、雪洞に照らされ茣蓙や畳が敷き詰められたその一角だけは幽玄な、まるで祭礼の場所のように清涼な静けさに包まれていた。

「ルヴィアさん……」

そして、そこにルヴィア嬢が居た。気を失っているのだろうか、桜の根元の畳の上で舞い散る花びらに埋もれる様に、しどけ無く横たわっている。

「凛、シロウ。私が切り開きます」

漸く俺が立ち直ったのを見やり、縁側で蠢く根に対峙していたセイバーが、静かに口を開いた。ルヴィア嬢を人質にとられた形だ、宝具で一気には無理だが、この根の中に踊り込み、切り伏せて突き進む事は出来る。そう言っているのだ。

「待ちなさいセイバー。それじゃ手間がかかりすぎるわ、わたしに考えがあるの」

そこに、じっとルヴィア嬢を見据えながら考え込んでいた遠坂の声がかかる。

「桜。さっき士郎を助けた時だけど、やっぱりあいつら陰を避けてなかった?」

「え? あ、はい。そういえば何か近づきたがらなかったみたいです」

「やっぱりね。桜、わたしがサポートするからあんたが道を開きなさい」

「でも、姉さん……」

「しっかりなさい。あんたが主役。桜が桜に負けちゃ洒落になんないでしょ」

一瞬躊躇する桜に、遠坂は悩む隙を与えない勢いで畳み掛ける。成程、そうか。

「そこを俺とセイバーでってわけか」

「そうよ、セイバーはあの桜の木を叩き切りに、士郎はルヴィアを確保ね。良い? 一気に行くのよ。あいつにルヴィアを盾に取らすような隙を与えちゃ駄目なんだから」

桜の肩を叩きながら、遠坂は口早に俺たちにも指示を飛ばしてくる。

「了解しました。シロウ、ルヴィアゼリッタを頼みます」

「わかった。それじゃ行くぞ。桜、遠坂。頼んだぞ」

策は成った。なら後は実行あるのみだ。




「それじゃ桜。行くわ。――
Anfang.セット

「はい、姉さん。――
Es bedarf.コンタクト

蠢く根に対峙する俺とセイバーの後ろで、遠坂と桜の呪が仲良く響いてくる。
幸い根っ子は、こっちが踏み込まない限り座敷に上がってくる事は無い。あくまで桜の木に近づく邪魔者を排除するために居るようだ。
だが、こいつらにとっては邪魔者を入れないだけで十分であったようだ。準備は可能な限り手早く済ませたつもりだったが、それでもその間に桜の木の方でも、どこか異様な何かが進行しているようだった。

「シロウ……」

「ああ、くそっ! なんだありゃ?」

桜の木の下、不可思議な宴席の一角。ちょうど西にあたる部分だろうか、桜の花びらが渦を巻き、門のような、穴のような不可思議な空間を形作りつつあるのだ。

「遠坂、急いでくれ!」

「急いでる。急かさない! ――
Auf, auf zum die goldne Morgensonne, 黄金に輝く  朝陽よ! zum die Silberne Nichthimmel白銀に煌く 月光よ!

「姉さん、早いっ ――
Der Disteln kopft汝の力, An Eichen dich und Bergeshohen野に 峰に 満とも

思わず叫んでしまった俺の声に、怒声で返してきた遠坂だったが、それでも遠坂自身も異変に気がついたのだろう。呪は更に早口に、高速詠唱に変わって行く。おいおい、桜が付いて行き切れないぞ。

「甘ったれない! ――
Wie Mond und 黄金と 銀の 輝きの如くSonnenschein, Die Strase frei妨げられる事無く 道を拓くべし. っ!

「――
Musstなれど mir meine Schatten我が 愛し児に Doch lassen stehn触れる事なかれ. っ!

それでもぎりぎり、最後には必死で追いすがる桜の呪が追いついた。

―― 蝗!――

途端、闇色に輝く陰が一直線に桜の木に向かって伸び、僅かに根っ子の群れが陰を避けるように怯む。

―― 鍠!――

そこにすかさず金と銀の怒涛が襲い掛かる。
怯み開いた僅かな隙間に、捩じ込むように波頭が叩き込まれると、そのまま一筋の道を桜の木の根元に向かって押し広げた。

「今よ!」

「おう!」

更にその道を俺とセイバーが突っ走る。
届く。
陰におびえ、金気に阻まれた桜の根は俺たちが通り抜けるまでには、この道を塞げない。
残るは突風のように吹き付けてくる桜の花びらだけ。
確かに旋風に加速され、鋭くまるで剃刀のような花吹雪だが、こんなもので俺やセイバーは止められない。

「ルヴィアさん!」

「行きます!」

ついに、あの不可思議な宴席まで駆け抜けた俺たちは、二手に別れ更に加速する。
間に合う。まだあのおかしな穴も開いていない。これで詰みだ。

「なっ!」

「くっ!」

だが俺たちは届かなかった。ルヴィア嬢の、桜の前で足を止めさせられてしまった。
根っ子が襲い掛かってきたわけでもない。穴が開いておかしな何かが飛び出してきたわけでもない。ましてやルヴィア嬢が人質にとられたわけでもない。

「お止めなさい! シェロ、セイバー!」

俺たちの足を止めさせたのは、桜の花びらを後光のように纏い微かに頬を上気させ、俺たちと桜の木の間に割って入ってきた、ルヴィア嬢その人の姿だったのだ。




「……ルヴィアゼリッタ。貴女はまさか……」

だが、足を止めたのは一瞬。まずセイバーが厳しい表情のままじりっと前に出る。
それはそうだろう、浚われた相手が浚った相手を庇うような事をしたのだ。乗っ取られたか、操られたか、そう考えても不思議じゃない。

「違いますわ。わたくしは正気です。それは少し酔ってはいますけど」

だがルヴィア嬢は、多少足元は危なっかしいものの、“金色の魔王きんのけもの“の瞳のまま、真っ向から俺たちに視線を向けてくる。
確かに、その瞳には何かに操られているような影は欠片も無い。ちょっと酒臭いけど……

―― 這!――

「くっ!」

と、ここで漸く根っ子が追いついてきた。くそ! やっぱり……

「貴方もお止めなさい! この者達はわたくしの従者とお客様です!」

だが、こちらもまたルヴィア嬢の一喝ですごすごと地面の下に戻っていく。
って、なんだこれは? そりゃルヴィア嬢の一喝はもの凄いけど。これじゃまるでこいつらルヴィア嬢の……

「ルヴィアゼリッタ。これは一体……」

セイバーもこの異常さには気がついたようだ。剣こそ収めない物の、どこか気の抜けた顔でルヴィア嬢に問い質した。

「ちょっとした行き違いですわ。根は収めさせますので、リン達もこちらに呼んで、それから説明いたしましょう。お客様もそろそろ御出でになる頃ですもの」

それにルヴィア嬢も、ほっと息をつくように応えると、桜の老木に手を触れ、庭でのたくる根っ子の群れを地面の下に納めさせた。どうやら、これで争い事には終わりに出来るようだ。

「お客様?」

ただ、少しだけ気になる言葉があった。だからそれに付いて尋ねてみると。ルヴィア嬢は花びらの渦を指し示しながら俺ににっこりと微笑みかけて来た。

「ええ、百年の思い出ですわ」

その言葉を合図にするかのように、舞い踊る花びらはまるで花咲くように、どこか不可思議な光を放ち始めた。ああ、そうか、これは……





「つまりなに? こいつ宴会の幹事だったの?」

「リン、いくらなんでもその言い方は、風情が無さ過ぎますわ」

そして今、俺たちは雪洞に照らされた茣蓙の上で、車座になってルヴィア嬢の説明を聞いている。
手元には塗りの杯に注がれた日本酒の、独特の澄んだ香りが漂い。頭上にははらはらと舞い散る桜の花びらが月明かりに映え、まるで天の川のように流れている。
そんなただでさえ幽玄な光景が、そこかしこで立ち、あるいは座り桜の花を見上げている白く漂う影のせいで、ますます現実離れした、まるで異郷のような雰囲気をかもし出している。

「『東風吹かば にほひおこせよ唐桜 主なしとて春をわするな』か……知らせた上に呼んで来ちまってたってわけか……」

そう、この白い影こそが『お客様』 歴代のこの屋敷の主たちの幽霊だ。中にはまだ死んでいない人や、俺たちのような『招待客』もいるってことだから、この桜の思い出、あるいはこの屋敷に残った残留思念というべきかも知れない。

「初代の当主が和歌に託して残した言葉を遺言と思いを、律儀に守って毎年香りを黄泉路に送っていたわけですの。そんな小さな言霊を、この桜は百年かけて呪にまで高めていったという事ですわね」

一年かけてゆっくりと力を貯め、ただこの一時を創り出す。
初代だけでなく、この異郷の地で自らの主となった仮初の客達を今日この日に招き、ただ一夜だけ異郷の地で咲く故郷の花をお披露目する。この桜は、あの和歌の意味をそう取ったのだろうと言うのだ。

「じゃあ、あの花吹雪は。この桜が用意の為だったんですか?」

「ええ、什器や調度はこの屋敷の備品ですし、お酒はこの事に気づいた歴代の主の方が、毎年届けてきているもののようですわね」

「しかし、散らかすのは……」

「安心なさって、セイバー。夜が明ける前までには、綺麗に片付けられているはずですわ」

どうやらあの桜はこの屋敷の一種のブラウニーのような存在にもなっていたらしい。道理で人が住んでいない割りに綺麗だったはずだ。

「じゃなに? わたし達はとばっちり?」

「わたくしは新しい主ですもの、当然招待客に含まれますわ。でもリンは単なる障害物ですわね」

だから、桜はそんな部外者を、宴席の邪魔にならないように排除しようとしていたという事だ。

「……なんか。腹立つわね、この桜」

それを招待された事で真相に気づき,慌てて俺たちを止めた上で、自分の従者と客分として桜に受け入れさせたのだとルヴィア嬢は続けた。

「ですが、嬉しいでしょうね……」

そんな遠坂に苦笑しながら、セイバーはふと幽霊達に視線を送ると、どこか羨ましげに呟いた。

「彼らは覚えていてくれる者がいる。仮初の客であっても、記憶のある限り彼らは此処にいる」

ああ、そうか。
そんなセイバーの横顔を見て、俺はふと気がついた。セイバーは英霊だ、英霊は人々の記憶に残り願いを具現する存在だ。
だが、それはある意味他人の描いた偶像に過ぎない。本当のセイバーを、今ここにいる女の子であるセイバーを覚えていた存在なんて、今までどこにもいなかった。

「俺たちがいるさ」

だから俺はセイバーに笑いかけた。

「遠坂だって、ルヴィアさんだって、桜だって、皆だってセイバーのことは忘れやしないぞ。それにこの木だって」

俺は桜の老木に手を付き、周りの白い影を見渡しながら言葉を続けた。

「俺たちみんなが死んだって、こいつは覚えてる。きっと春になったら、何処にいようとも春の香りを送ってくれるさ」

多分この木は、俺たちのことも覚えていていてくれる、そして俺たちが死んだ後もこの香りを届けてくれるのだろう。この木はそういう木だ。
セイバーじゃないが、この街を離れた後もこいつが覚えていてくれると思うと、なんだか嬉しくなってくる。そう思うと、えらい迷惑を掛けられた事も笑って済ませられるような気がする。

「決めましたわ」

と、そんな俺たちを眺めていたルヴィア嬢が、柔らかな微笑を浮かべながら口を開いた。

「わたくし、この屋敷を手放しません。この街を離れても、時々こうやって思い出とオハナミをするのも悪くありませんものね」

そしていつの日か、誰かがこうやってわたくし達を眺めながらお花見をすると言うのも面白そうですもの、と舞い散る花びらを見上げる。

「それは……嬉しい事です」

「ま、悪くないわね」

「なんか、素敵ですね」

いつしか俺たちも、そんなルヴィア嬢に誘われるように、桜の木を見上げていた。
いずれ、俺たちはそれぞれの居場所に帰る。けど年に一度、思い出はここに集ってこうやって花を見る。それはとても素敵な事だろう。

「ああ、そりゃ良いな」

俺たちは、それぞれにそんな思いを抱きながら、何時果てるとも無く舞い散る花を見上げていた。

END


倫敦に咲いた桜が見せた、一夜限りの夜桜見物なお話でした。
季節は春。春といえば御花見。とはいえストレートに書いては面白くない。
というわけで、過ぎていく思い出と、その一瞬を守って佇むもの。その刹那の逢瀬をBritainで描いてみました。
メイド姿の三人娘はおまけです(笑)

By dain

2005/4/13 初稿
2005/11/25 改稿


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