「鍵は錠を開け……」

「黄金の女神は、我らが王の血肉イブへと向かう……」

「残るは三魂を解き放ち……」

「我らがファラオの下、悲願を成就するのみ……」

暗い闇の向こうから、ねっとりと執念に取り付かれた泡沫が次々と浮かび上がる。
幾千年の歳月、積み重ね、取り込み、取り込まれてきた思いの全てが、嘗て失われ、今ここに再び訪れた再生の好機に歓喜していた。

「全ての解は得られた。此度こそ成就せん」

星は正しい式を形作り、全ての道具は正しき解を導くべく然るべき位置に嵌りつつある。
僅かな不確定要素も手の内に落ちた。
例え嘗てのような邪魔が入ったとしても、今回はその不確定要素が邪魔者を排除すべく動くはずだ。

「我らが成すべき事は」

「然るべき時に、然るべき所にあるようにするだけ」

もとより彼らは“神官”、“神”ではない。力を持つ事でなく、力あるものに仕え、力の行く先を捉えその流れを導くことが出来れば良い。
“神”は他にいる。否、今こそ“神”を生み出すのだ。

「星は然るべき位置に定まり、今こそ刻は満ちた」

「全てはこの刻の為、滅びを滅ぼし救いを成さん……」

幾重にもこだまする三千年の妄執は暗い闇の中に静かに沈み、再び一つに纏まった意識が現実に戻ってくる。
暗く冷たい闇とは対象的に、未だ陽光の残滓を残した現実さばくに横たわる人影は、三千年の重みを背負うかのようにゆっくりと寝台から身体を起こし、祈るように最後の言葉を呟いた。

「我らが主“ステナトン”の顕現を」





Fate/In Egypt
く れ な い の さ ば く
「硝砂の魔術使い」 ――EMIYA―― 第二話 前編
Heroic Phantasm





赤い砂丘の上に遠坂が立っていた。
俺に背を向け、赤い夕日を睨みつけるように見据えている遠坂の姿。後ろ向きのはずなのに、何故か俺には遠坂の表情までもが見えていた。

「……」

そんな遠坂に手を伸ばし、声をかけようとした刹那。遠坂は振り向きもせず砂丘の向こうに歩き出した。しっかりとした、いかにも遠坂らしい足取りで進み続ける後姿。暫らく見とれていた俺だったが、どんどん遠くなる遠坂の姿に、慌てて後を追いかけた。

「ああ、もう。ちょっとくらい待て!」

だが、追いつけない。俺は走っていて、遠坂は歩いているって言うのに差はどんどんと開いて行く。駄目だ、このままじゃ見失う。

「遠坂!」

だがいくら叫んでも喚いても、遠坂は振り向きもせずどんどん、どんどん遠くなる。いつしか遠坂の背中は豆粒になり、ついには俺の視界から消えてしまった。
だが、諦めるわけにはいかない。諦めるなんて出来るわけが無い。
だから俺は必死で追い続けた。
ただひたすら、道標すらない無限に広がっているかのような赤い砂漠を、俺は我武者羅に駆け回り続けた……

「くそぉぉっ!」

と、己の不甲斐無さに対する自分の罵声で目が覚めた。

「つつぅ……」

続いて肩から背中にかけての激痛。慌てて自分の身体を見下ろすと、最近ご無沙汰だった包帯が上半身一体を覆っている。まるで木乃伊だな、痛みよりまずそんな場違いな思いが頭に浮かんだ。……木乃伊?……

「ああ……」

それで思い出した。今、エジプトに来ているんだった。
俺は、飾り気の無い実用本位のプレハブ病室のベッドで横になりながら、どこかはっきりしない記憶を手繰り寄せた。ええと、ここはアスワンだったっけ?……確か、俺はここの怪しい神殿を皆と調査に来て……

「っ! 遠坂! ルヴィアさん!」

そこで遠坂とルヴィアさんが消えてしまったんだ。
拙い、こんなとこで寝てる場合じゃない。俺は慌てて身を起こした。

「つぅ!」

途端、また激痛が全身を覆う、くそっ! なんてやわなんだこの身体は、痛みくらいなんだ! 早く遠坂達を……

「……先輩? っ! 駄目です! 急に起きちゃ!」

そこに俺の叫びに気付いたのだろうか、桜が駆け込んできた。

「無茶しないでください! 先輩、死にかけてたんですから!」

それこそ泣き出さんばかりの形相で、必死に俺をベッドに引き戻す。
一瞬、跳ね飛ばそうとした俺だったが、身を盾にしてまで俺を押さえつけようとする必死の桜に、却って冷静になることが出来た。俺が死にかけた? 

「待て桜。話を整理しよう。俺より、まず遠坂とルヴィアさんじゃないのか?」

俺が死に掛けたってのは良く判らないが、それは置いておくとして、まず桜だ。
俺は眦を吊り上げてしがみ付いて来る桜を引き離し、取り敢えず落ち着かせようと肩を抑えて向かい合った。

「姉さんとルヴィアさんなら、今ミーナさんがセイバーさんとオーウェン君と一緒になって、一生懸命探している最中なんです」

これで何とか落ち着いたのだろう。桜は、わたしじゃあんまり手助けできませんから……だから先輩のお世話の方を任せてもらったんです、と微かに口惜しそうに顔を伏せ、呟くように応えてくれた。そうか、セイバーとオーウェンは二人の使い魔だ。そのラインを辿るって手があったか。

「……無事……なのか?」

「ラインはまだ繋がってるって言ってました。詳しい事は判らないんですけど、二人とも生きてはいるそうなんです」

何か一つ肩から力が抜ける。なんだか痛みも多少は和らいだ気さえする。そうか……まだ生きているんだな。
なら、なら希望はある。見つけ出して助け出せる。一瞬さっきの夢が、遠坂を見失いあてどなくさ迷う自分の姿が浮かんだが、俺は頭を振ってそんな弱気を追い出した。大丈夫、道標はあるんだ。必ず助け出してみせる。

「よし、じゃあすぐミーナさんの所へ行こう。詳しい話が聞きたい」

となれば、やはり寝ている場合じゃない。直接の手助けは出来ないかもしれないが、遠坂達の居場所がわかったら直ぐにでも動き出せる用意くらいは出来る。焦っても仕方がない事かもしれないが、急いで準備すればそれだけ早く遠坂達を助け出せる。急いで待てって奴だ。

「無茶言わないでください! 先輩は怪我人なんですから!」

そう思って立ち上がりかけたところで、またも桜がしがみ付いてきた。まいったな、心配してくれるのは有難いんだが。

「俺はもう大丈夫だ。痛みはあるけど我慢できないことはない」

確かに痛みはかなりきついものの、落ち着いてみれば傷もふさがっているようだし、手も足もちゃんと動く。あの頭痛も綺麗に消え、気分だって悪くない。それどころか、これだけの激痛なのに身体が軽く感じるほどの活力が漲っている。
これなら痛みさえ我慢すれば問題ない。情けない話だが怪我や痛みには慣れている。
俺は納得してもらう為、胸や手足を確認しながら桜に向かって話しかけた。

「本当に……大丈夫なんですか?」

そんな様子を、いかにも胡散臭そうに見ていた桜だったが、何とか納得はしてくれたようだ。どこかほっとしたように息をつくと、改めて俺の服を差し出しながら、大変だったんですからと、今までの経緯を説明してくれた。

「……本当に、俺は死に掛けだったんだ……」

「はい、あの後すぐオベリスクが倒れてきたんです。先輩、わたしを突き飛ばして自分はその下敷きに…… セイバーさんと必死で掘り出した時には虫の息だったんですよ」

その上、体中傷だらけだったし、と俺の傷を包帯の上からなぞりながら、一つ一つ説明までしてくれた。うわぁ……俺、本当に良く生きてたな……

「心臓のところの傷を見たときは、わたしの心臓の方が止まりそうだったんですからね!」

更に、俺の左胸に手を当てて、本当に泣きそうな顔になって睨みつけてくる。

「いや、これは別に昨日今日の怪我じゃないんだが……」

そう、これはあの聖杯戦争の時の傷だ。まだセイバーにも会う前、マスターにさえなっていなかった時の物だ。俺は左胸の傷跡をまさぐりながらそっと息をついた。これはその時ランサーに心臓を貫かれた傷。そして、遠坂に直してもらった傷だ。

「でも助け出したら、見る見るうちに傷は治り出して。本当にほっとしました」

治癒の呪でも用意してあったんですか、と桜は幾分不思議そうに尋ね返してきた。

「いや、別にそんな事はなかったんだが……」

確かに、どういうわけか人より遥かに怪我なんかの治りは早いが、別にこれと言った術を施しているわけではない。第一、そんな死に掛けからここまでピンシャンするような治り方なんて聞いた事が……

「あ……」

いや、聞いた事こそなかったが経験はあった。
それもまた三年前のあの戦い、聖杯戦争の時の不可思議な治癒。あれはまさにこんな感じで、殆ど死に掛けの体が意志の力だけで見る間に治っていっていた。
そういえば、この妙に軽い身体も……

「……なんだ……これは?」

と、改めて意識を周囲に戻し、俺はあっと驚いた。空気の、大気の中の大源マナの密度が半端じゃない……まるで活性化している霊脈の真上のような濃さじゃないか。

「桜、お前は気が付いてないのか?」

「え? あ、その……なんか体が軽いかなって言うのは感じてましたけど……」

遠坂やルヴィア嬢、それに俺のことで頭が一杯で全然気がついていなかったらしい。いや、わかった。わかったから陰を蠢かせて確認するのは止めなさい。

「そういえば、なにかミーナさん達がそれらしい事を言っていた気がします……」

「わかった、とにかく直ぐにミーナさんと、それにシオンさんに会うぞ。何処に居るんだ?」

俺は大急ぎで着替えをしながら桜に尋ねた。

「ミーナさんでしたら、隣の建物に急造の陣を敷いて術の最中です。アトラシアさんの方は、あの後直ぐに何か呼び出しがあって、飛んで行っちゃいましたけど」

漸く安堵して、慌てふためいていた自分を省みてでも居るのだろうか、微かに赤くなって俯きながらちらちらと俺を伺っていた桜だったが、はっと気がついたように再び顔を赤らめながらも、知っている限りの事を話してくれた。なんでも、あの騒動でアケメスの爺さんも倒れてしまい、アトラス側は例の補佐官が束ね、今ここで全体を仕切っているのはミーナさんだと言う事だ。

「一体どう言うことなんだよ? 全然動いてないじゃないか」

聞いていて少しばかり腹が立ってきた。遠坂とルヴィア嬢が消えたって言うのに……くそっ、俺が倒れなきゃ今頃神殿に乗り込んでるぞ。

「それがその神殿なんですけど……」

「話は後だ。行くぞ、桜」

とにかくまず動く事だ。俺はどこか歯切れの悪い桜を引きつれ、外に飛び出した。

「……なっ!」

途端、声を失った。
俺が意識を失う前には、確かアスワンに広がるナセル湖の一部を遮るように隆起した台地が迫上がり、その上に神殿が聳え立っていたはずだ。
だが、今その山頂は再び隆起した台地に飲み込まれ、アトラスやシュトラウスの機材諸共すっかり埋め尽くされている。

「……なんてこった……」

夕日を浴びて真っ赤に染まった岩山に蟻のように集りながら、必死で態勢を立て直そうと勤める魔術師達の喧騒の中、俺はただ呆然と岩山を見上げる事しか出来なかった。

「……畜生」

「先輩……」

だが、こんなことで負けるわけにはいかない。たかがこの程度のことで、遠坂を諦められるもんか。
俺は気を引き締めなおして、新たに出来上がった赤い岩山をもう一度睨み据えた。

「シロウ!」

「士郎くん! もう大丈夫なんですか!?」

と、そこにセイバーとミーナさんの、驚いたような声が掛かってきた。
どうやら施術を終えたらしく、丁度隣の建物から顔を出したところで俺に出くわしたようだ。

「俺は大丈夫だ。それより事情がわからない。説明してくれ」

二人の後ろから現れ、どこか哀しげに鼻を鳴らすオーウェンを抱き上げる桜の隣で、俺は二人の心配そうな視線に応えた。
目の前の情景とわけがわからない焦燥で、叫び出したいほど煮詰まっていた俺だったが、思いのほか冷静な声を出す事が出来た。
今の俺はあの夢の中の俺と一緒だ、どこに向かって走れば良いかさえわからない。だが、あの時のように我武者羅に走り出すわけにはいかない。ともかく情報が欲しかった。

「じゃ指揮車に行きましょう。士郎くんが意識を失ってる間に、とんでもないことになってますからね」

「とんでもない事って、遠坂達が消えたのはとんでもない事じゃないのか?」

それでも俺の無事にほっとしながらも、どこか冷たいミーナさんの態度に、思わず苛つきが出てしまった。

「それもとんでもない事には変わりありませんけどね。ただ、それだけに構っていられなくなっちゃってるんです」

「……どう言うことなんだ?」

溜息交じりのミーナさんの言葉。聞き捨てならなかった。今、第一に考えなきゃならない事は遠坂達のことじゃないのか?
そう思い改めて周りを見渡した俺は、更に眉を顰めてしまった。ミーナさんだけじゃない。今この場で立ち働いているシュトラウスやアトラスの連中も、どこか様子が違う。
確かに必死で立ち働いているのだが、どうもその人数が半分くらいに減っているように思える。それに作業そのものも、遠坂達を助け出すのに向かう為っていうより、何かを必死で押さえ込む為の動きのように思えた。

「凛さん達が消えて、こっちの神殿が埋まっちゃったのと期を一にして、ちょっと洒落にならない事になってるんですよ」

難しい顔で済まなそうに口を開くミーナさんの隣で、セイバーも口惜しそうに俯いて唇を噛んでいる。ということは、セイバー自身も悔しいが納得するような理由があるって事か。

「わかった、ともかく事情を説明してくれ。話はそれからだ」

気持ちを押し殺しているのは何も俺だけじゃない。セイバーもミーナさんも、俺の隣の桜だって、その腕の中のオーウェンだって、みんな堪えてるんだ。
焦る気持ちを抑えミーナさんに頷いた俺は、それでももう一度だけ顔を上げ岩山を睨みつけた。くそっ……もう少しだけ待っていてくれ。遠坂、ルヴィアさん。




「早速だけど話してくれるか?」

指揮車に移動した俺は、席に座る間も惜しんでミーナさんに事情を聞くことにした。

「はい、まず凛さんとルヴィアさんですけど生存は確認できました」

「ああ、それは桜から聞いた」

「それと、今現在の大体の位置も掴みました」

あの魔術の余波でどこかへ強制的に飛ばされてはいるものの、どうやらセイバーやオーウェンとのラインはまだ生きているらしく、それを伝って場所の特定が出来たのだと言う。

「何処なんだ?」

「あの岩山の中です。神殿があった場所の真下。丁度基部の辺りになりますね」

神殿が埋まってしまったとはいえ、時間結界が解かれた事から、機材と施術による内部の観測が可能になったのだと言う。
そんなわけで、遠坂達を捜索していた所、あの岩山の埋まった神殿の真下あたりに幾つか別の空洞を発見したらしい。更にラインを伝った探査術で測定した結果、遠坂達もどうやらそこの一角に飛ばされたらしい事が判明したのだと言う。

「一種の瞬間移動か。とんでもないな……」

「古代の魔術は神秘の桁が違いますからね」

確かに、現代の魔術師には到底出来かねる大魔術だ。だが今の俺にとって、それは大した問題じゃない。

「それで、そこへは行けるのか?」

「解析の結果、神殿の奥の院から、まっすぐ地下に下りる通路が見つかりました。凛さん達はそこの一番奥に居ると思われます」

ミーナさんは測定の結果から、なんでも神殿そのものが、その地下施設の門であり葬祭所であるらしい事がわかったのだと続ける。

「確かあの神殿、屋根がなかったろ? 埋められちまってるけど、大丈夫なのか?」

「探査術式で調べたんですけど、すっぽり空洞のまま中に残っているみたいですね。どうも、元々そういう仕組み物理結界になっていたらしいんですよ」

だからこそ生きた遺跡だったということなのだろう。いや、最早こいつは遺跡とは言えない。顕現した神秘、一つの巨大な遺物アーティフィクトと言って良いかもしれない。

「でもまだ埋まったまんまなんだろ? まず神殿への道筋を作らないと」

「それなら、正面だけは何とか掘り返しました。遠坂さんとルヴィアさんの手で時間結界は解かれてますから、扉も普通に閉じられているだけで、開こうと思えば開ける状態みたいですね」

ここまで聞いて、俺は眉を顰めてミーナさんとセイバーの顔を見渡してしまった。桜も詳しい事は聞かされていなかったのだろう、俺同様どこか憮然と二人の顔を見据えている。

「それで……なにが問題なんだ?」

そこまで分かっているなら、何故行動に移らない? 確かに生半可な神秘じゃないだろうが、助け出す気があるのならせめて神殿の中だけでも、調べに入ってなきゃおかしくないか?

「それなんですけど、まずこれを見てください」

そんな俺の疑問に、ミーナさんは徐に大きなエジプトの地図を取り出すと、テーブルの上に広げて見せた。

「なんなんだ? この印」

この場所、アスワンに付けられた印は良いとして、アスワンの真南ヌビア砂漠のど真ん中と、北西ハルガ砂漠の中央、そして北東アラビア砂漠紅海側と三箇所に付けられた印の意味がわからない。丁度このアスワンを中央に正三角形になるような、意味ありげな形なんだが、確かそんな砂漠の真ん中には何も無いはずだぞ。

「丁度、この神殿に凛さんとルヴィアさんが飲まれた頃でしょうか、合わせるようにこの三箇所で古代エジプトの遺跡が顕現したんです」

しかも、ここ同様生きた遺跡のようだと言う。

「ちょっと待ってくれ……」

この神殿だけでも大事だって言うのに、他に三箇所? それに遠坂達が飲まれたのと一緒って事は……

「ええ。多分、あれがきっかけで起動したものだと思います」

そう言ってミーナさんは、数枚の写真を地図の上に重ねておいた。
どうやら、その遺跡の写真らしい。どれも何か砦のような実用本位の軍事施設といった趣だ。ここにあった神殿のように光り輝く大理石にこそ覆われていないが、それでも巨石を組み合わせて作られた城壁は、ついさっき建てられたかのように傲然と屹立していた。
だが、それだけなら驚きはしない。何しろ既にここの神殿を見ている俺たちからすると、やはり一段落ちる神秘だと見て取れる。問題はその中だ。

「なんだこれは……」

多分航空写真だろう、その城砦を真上から捕えた目の粗い一枚。城壁に、そして城砦の中庭に整然と枡形に立ち並ぶ等身大の無数の影。そのどれもが夕日を浴びて煌めく得物を持ち、今まさに城壁の外に溢れようとしている。

「……まさかと思うけど、これって……」

「ええ、士郎くんの思ったとおりです。古代エジプト、ファラオの軍勢ですね。まあ木乃伊なんですけど」

俺は愕然としてミーナさんの顔を見詰めてしまった。ちょっと待ってくれ、木乃伊? しかも数が尋常じゃない。数千、いやもし三つ全てが同じ状況だとすると万に近い木乃伊が動き出してるって?

「それで、今は?」

「既に戦闘が始まってるんですよ。溢れ出した木乃伊軍を、私共とシオンさんの手勢で何とか押し込めているって所ですね」

整然と隊伍を組んだ木乃伊の軍勢。そいつが、どうもここアスワンに向かって進軍を始めようとしていたのだという。そんな物の相手を表の軍隊に任せるわけにはいかない。だから、今ここには作業員以外の要員は殆ど居ないという事だ。

「そんな馬鹿な。どこにそれだけの力が……」

俺は唖然としてミーナさんの顔を見詰めてしまった。
“木乃伊の呪い”という言葉はあるが、なにも木乃伊の全てがそのままの姿で動き出す呪物だという訳ではない。いや、むしろそれは例外なのだ。
本来はエジプト人の信仰では人の魂というのは不滅の存在で、生命力たるカー、精神たるバーに分かれているとされている。ただそのうちバーは、生前の肉体の存在が必要で、それを失うともう現世には戻ってこれないのだとされていた。つまり人の魂は不滅ではあるが、死体がなくなると現実の世界とのつながりを完全に断たれてしまうと言う事なのだ。
だから、生者が死者を供養し、その加護を受け続けようと思うなら、死者の肉体を保存しておく必要がある。その為の方法が木乃伊というわけだ。
復活する木乃伊と言うのもあるが、それは特別な施術が施されたものだけだ。
しかも本来の復活する木乃伊とは、復活を約束されたものだけに宿ると言うサフと言う聖霊を、施術を通して形成し、正しい儀式の下、正しい陣の中に埋葬し、更に復活に必要な儀式を執り行い、生前同様の姿で復活を果す事が出来る物を指すのだ。尤も完全に復活した木乃伊なんて聞いた事もないが。
だから木乃伊姿のまま動き出す木乃伊と言うのは完全な呪物、或いは魔具なのだ。つまり、それを起動するにも、動かし制御するにも魔力が必要となる。一つ二つならともかく、これだけの数を動かす魔力なんて……とてもじゃないが考えられない。

「それなんですけど、士郎くんは気付いてません?」

そんな俺の驚きに、ミーナさんは真顔になって顔を近づけてくる。気が付くって……

「……ここの大源マナの密度の事かな?」

「ええ、異常ですよね。神殿が閉ざされているうちはこんなことなかったのに、今のここや顕現した城砦の周囲は、まるで古代エジプト時代が蘇ったみたいに神秘に満ち溢れてるんですから」

ミーナさんはそう言いながら、地図の城砦をそれぞれ直線で結び、アスワンを中心とする地域を大きな三角形で括って見せた。

「まさか……この大きさの結界?」

「そう、この範囲内は今まさに古代エジプト時代。神秘の時代に戻ろうとしてます。いわば一種の固有結界に取り込まれようとしてるんですよ」

「そんな! こんなもの維持できるわけが無い、世界そのものに押しつぶされちまう」

「普通ならそうですよね。世界は自分と違うものを排除しようとしますから。でも考えてみてください士郎くん。この結界が具現しようとしているのは過去の世界。つまり時間軸は違っていても、世界と違うものとは言い切れないんですよ」

世界を騙して、過去の思い出を現実とすり替える。その為の基点が城砦でありこの神殿なのだという。

「ともかく、そんなわけで今はそっちの城砦を封鎖するのにも手を取られちゃってて、ごめんなさい士郎くん」

基点たる城砦を、更に大外から結界で包む事で神秘の拡大を食い止めているのだと言う。中の木乃伊を押さえ込み続けるのにだって人員は要る。だから、こちらは今居る人数だけで何とかしなきゃならないって事だ。

「話はわかった」

確かに、悔しいし我慢ならないことではあるが、それならば生存が確認された遠坂達の救出が後手に回っている事は理解できる。それだけのてんてこ舞の中で、ミーナさんは遠坂達の居場所まで探り出してくれたのだ、ミーナさんに対しては感謝こそすれ、非難する謂われはない。だが……

「なんでミーナさん達だけなんだ? アトラスや協会ロンドンは何をやってるんだ?」

こっちの方には本気で腹が立ってきた。そんな大事なら、すぐさま全力で動き出すべきじゃないのか?

時計塔ロンドンには増援要請を出しました。取り敢えず、独逸のシュトラウス本隊はアトラスの許可があり次第飛んできてくれるはずです」

それが来れば一気に城砦を落として、基点を破壊する事も出来るだろう。そうなれば、ここにだって手を入れられる。ミーナさんはそう、俺を元気付けるように言ってくれた。

「まどろっこしいな、そのアトラスはどうしたんだ?」

「それが……妙に腰が重いんです。こんな事になって、直ぐにシオンさんが呼び戻されたんですけど、なしの礫で……」

シオンさん自身は呼び出されなくても、アトラス院からの増員と、増援の入国許可の為に本院に飛んで行くつもりだったらしく、ミーナさんに後事を託して出発したらしい。だというのに、それっきり連絡すら取れない状態なのだそうだ。

「なにやってんだよ……」

考えてみれば、こんなことになったのもアトラス側の不手際が原因じゃないか。今、倒れている爺さんを非難するような真似はしたくないが、それでも愚痴が零れる。第一これじゃ無責任すぎる。

「ごめんなさい、士郎くん。ともかく今はシオンさんと連絡だけでも付けないと身動きが取れないの」

「いや、ミーナさんが謝る事はない」

そういう事情なら、腹立たしくはあるが仕方がないと言える。とはいえ……

「ヴィルヘルミナの立場もわかります。ですが、これ以上待つ事は出来ません」

俺の気持ちをセイバーが代わりに言ってくれた。うん、俺たちは俺たちで動けば良い。幸い俺も痛みはあるが調子は悪くない。

「ああ、セイバーの言うとおりだ。ミーナさんには悪いけど、ここは……」

「遅くなりました。お待たせして申し訳ありません」

俺たちだけで……と言いかけたところで、シオンさんが指揮車に入ってきて一礼した。

「お帰りなさい……どうでした?」

これで漸く動けると、ミーナさん初めどこかほっとしたような空気に包まれたのも束の間。シオンさんのどこか憔悴した表情に、再び緊張が走った。

「残念ながら、増員も増援も却下されました。アトラス本院は、本事変を協会ほんぶの介入を待たず、最終的解決案を以って収拾するとの解に達しました」

「冗談でしょ……」

シオンさんの沈痛な声。それを聞いた途端、ミーナさんの顔から表情がすとんと落ちてしまった。
だが、俺たちには事情がさっぱりわからない。増員も増援もなし? 俺たちだけでやれって事か? 最終解決案? なんの話だ?

「ちょっと待ってくれ。話が全然見えないんだが」

第一そこには遠坂のとの字も出てこない。それに“最終的解決案”って言葉にも、何かもの凄く嫌な響きがある。

「具体的に申します」

そんな俺たちに、シオンさんは一瞬だけ言いよどんでから、徐に口を開いた。

「“最終的解決案”とは、本遺跡並びに新規に顕現した三遺跡に対して現時刻を以って大規模破壊兵器を使用し、全てを消去する事で顕現した神秘を隠匿しようと言うものです」

「なっ!」

一瞬頭が真っ白になる。遠坂の名前もルヴィア嬢の名前も出てこなかったわけだ。連中、二人を見殺しにして全部ぶち壊してなかった事にするつもりなんだ。
人を人とも思わぬ、なんとも協会らしいやり口だ。だが、俺はこんな事を許すことは出来ない。

「ふざけるな!」

「シオンさん」

思わず激昂してシオンさんに詰め寄りかけた俺だったが、するりと割って入って来たミーナさんに制されてしまった。

「まさか、そんな出鱈目な解決案を飲んできたわけじゃないでしょうね?」

「無論です。こんな何の努力もせずに思考を停止したようなやり方は、飲めるものでは無いと抗議しました」

なんでも最初は、有無を言わさずアトラス・シュトラウス合同調査隊の即時撤退と、最終的解決の実施を宣告してきたのだと言う。

「現状を鑑みて、最終的な遺跡の破壊が、止むを得ないとのことについては同意しましたが、その為の実践と手段については、こちらに一任するとの譲歩を引き出してきました」

それを聞いて俺は少しだけ安堵した。まあ、その為に遠坂達を犠牲にするっていうのは飲めないものの、こんな怪しい遺跡をぶち壊す事には俺だって同意する。

「ただ、先程申したように外部からの介入と、これ以上の増員は却下されました」

つまり、今ここにあるシオンさんとミーナさん達の手だけでやれって事だ。遠坂達の事に関しては、端っから人手を借りられる事は期待していなかったから、これについては問題ない。ただいま居る人間だけで四箇所の神秘を抑えろって……シオンさんには悪いが、アトラスってとこは本当に碌でもないところだな。

「それと時間を制限されました……」

そのままシオンさんは、ちらりと手元の時計に目を走らせ一つ息をついた。

「猶予は現時刻より二十四時間。アトラス院はこちらの成否に関わらず、明日十八時零零分の時刻に遺跡が存在していた場合は、最終的な解決案を実施すると宣告しました」

「くっ……」

それを最後に場を沈黙が支配した。猶予はあと一日しかないって事だ。それまでに何とかできなければ、例えその場にアトラスの後継者足るシオンさんが居たとしても諸共にぶち壊す。アトラス院はそう言ってきたのだ。

「一日あれば十分です」

その沈黙を破ったのは、今度もセイバーの声だった。

「凛達はそれまでに私が助け出します。こんな事態で無ければそちらのお手伝いもしたいのですが、三つの城砦に関してはヴィルヘルミナとアトラシアにお任せして宜しいですね?」

断固たるセイバーの声に、俺も気を取り直した。そうだ、今は出来ない事じゃなく出来る事を考えるべきだ。場所はわかってる、道筋も見えている。だったら一日あればなんとでも出来る。

「そうだな、遠坂達については俺たちで何とかする」

「いえ、そう言うわけには参りません。もともとの責任の所在はこちらにあります」

「そうですよ、私共も出来る限りの手助けはします」

俺とセイバーの言葉に、ミーナさんとシオンさんの二人は、顔を見合わせると勢い込んで身を乗り出してきた。うん、なんのかの言ってこの二人はやっぱり人が好いな。
だが、そう甘えても居られない。現に、今にもおかしな木乃伊があふれ出して来ている他の遺跡に手を抜くわけにはいかない。ただでさえ人手は足りないんだ、遠坂たちを助け出せても、帰ってきた場所が木乃伊まみれでは困る。

「いや、ミーナさんとシオンさんは残り三つを何とかする方に全力を尽くしてくれ、扉さえ開けてくれれば、こっちは俺とセイバーの二人で十分だ」

「待ってください先輩! わたしも行きます」

―― Muew!

俺とセイバーが頷きあってミーナさん達にそう告げた途端、それまで黙っていた桜が、腕の中のオーウェンと一緒に勢い込んで話に割り込んできた。

「いや、あのな桜。気持ちは有難いんだが、これは凄く危険な事なんだぞ?」

「わかってます、わたしも魔術師なんですよ?」

「それはそうなんだが……」

「オーウェン君だって居ます。それに、わたしだって凄く危険なんですよ……」

ゾワッ……

一瞬、陽光の世界であるエジプトに陰が差す。
俺は心の中で小さく溜息を付いた。そうだな、確かに場数こそ踏んでいないものの、真っ向勝負なら桜はかなり強い。不意を打たれてパニックにでもならない限り、自分の事くらいは護れるだろう。それが分かっている以上、ルヴィアさんじゃないがここは桜を信じるべきだ。

「わかった、桜も一緒だ。但し俺やセイバーの言う事を聞くんだぞ?」

「はい!」

オーウェンをぎゅっと胸に抱きしめ、真剣な表情で頷く桜に俺も頷き返した。そうと決まれば、遠坂やルヴィア嬢が居なくて、ミーナさんの手も借りられない今の状況ではこの二人の参加は有難い。

――主よ、誰か忘れておらぬか?

ここで更に、別の思考が割り込んできた。

「ランスか、お前どこに居たんだ?」

――かの神殿の正面だ。主よ、これは生半の事ではないぞ。

と、そのまま意識を俺に送ってくる。

「……凄いな……」

ランスの目を通して送り込まれてくる、神殿の正面扉の光景。だが目に映るものが全てじゃない。ランスの意識を通して流れ込んでくる魔力、重圧。くそ、また頭痛がしてきやがる。

「……四つ……いや五つか」

――流石だ主、よく読んだ。

ランスを通しているせいか、いつもよりはっきりと扉の向こうから放たれる殺気を捉えることが出来た。
まだ時間結界に覆われていた時は無かった、明確な障害の意思。だが、だからと言って居竦んでいられない。

「それじゃあ、行こう。時間が惜しい」

「はい」

「待ってください」

そう言って立ち上がりかけた俺たちに、じっと俺たちの顔を見渡して居たシオンさんが、意を決したように声をかけてきた。

「なにかな?」

「戦力的には申し分無い事は認めます。ですが、古代エジプトの神秘に魔術師抜きで挑むのは余りに無謀です」

あ、いや。俺や桜も一応は魔術師なんだけど……

「そうですよ、凛さんやルヴィアさんだっていないんですから。そうですね……私かシオンさんかどちらかが付いていきます」

何気に二人揃ってかなり酷い事を言われたような気もするが、その気持ちは分かるし有難い。まあ、確かに俺も桜も半人前だし、何より知識って点で心許ないのも確かだ。とはいえ、

「いや、それは拙いだろ? ここの封鎖と、三つの城砦の攻略ってアトラスとシュトラウスの連合軍でやるしかないじゃないのか? 二人が欠けたら身動き付かないぞ」

そりゃここの封鎖くらいは何とかなるだろうが、こういう複合作戦で、指揮官が単独で別の最前線に立つってのは上手くない。

「それはそうですけど……」

「とはいえ不完全な状態で、あなた方を送り出すような出鱈目な真似は出来ません」

それでも何とかできないものかと頭を寄せ合う二人に、こんな状況ではあっても有難さに頭が下がる。だが、ここでこの二人の力を借りて遠坂達を助け出せても、帰ってくるところがなくなってしまっては意味が無い。ここはやはり俺たちだけで……

「その役割はわたしが成そう」

と再び立ち上がりかけたところで、今度は聞き覚えの無い声が指揮車の中に入って来た。

「え?」

誰だと思い、そちらを見て俺は軽く首を捻ってしまった。
昨日のナタティリという少女の手を引いた、矍鑠たる老人。どこか見覚えはあるのだが……

「……アケメス師……」

その老人を見て、驚いたように漏らしたミーナさんの呟きに、俺もまた驚きの声を上げてしまった。この人が? 嘘だろう。昨日会った時は、失礼だけど口も利けず目も見えずって位の、いつ死んでもおかしくないようなよぼよぼの爺さんだったぞ?

「……命を削られましたね?」

「此度の事、些か吾にも責がある。どの道そう長くは無いでな」

だが、続く溜息交じりのシオンさんの呟きと、アケメス師の応えで合点がいった。
魔力による生命力の増幅。先の命を削って一時だけ若さを取り戻す術式。いわば蝋燭の最後の輝きを今この時点に持ってきたって事だ。昨日の姿から察するに、多分この姿は数日と持たず燃え尽きるだろう。

「ヌビア学舎はどうなさるおつもりですか?」

そんなアケメス師に、シオンさんは冷たいくらいの声音で静かに問い質す。
さっき俺が、シオンさんやミーナさんに言った言葉と同じ意味だ。組織の長が一人勝手に離れてどうする気だ、そう聞いているのだ。
一瞬、前に出かけた俺だったが、シオンさんの視線の揺らぎに思いとどまった。
その視線の先には、毅然とした表情こそ崩してはいないものの、アケメス師のローブの裾をきつく握り締めているナタティリの姿があったのだ。

「それについてだが、アトラシア殿にお願いしたいことがある」

アケメス師は一つ頷くと、ナタティリの正面に屈みこみ、額をあわせ何事か呟き始めた。

「――ξwαw shm ξmyw−hat 」

「……っ! あ、あぁぁぁぁ、ああああああ!!」

途端、見えない何かがアケメス師からナタティリに向かって流れ出し始めた

「お、おい!」

「士郎くん、少しだけ我慢しててください」

慌てて飛び出しかけた俺をミーナさんが押し止める。その言葉に俺も気を取り直し、きつく唇をかみ締めた。そう、落ち着いてみれば俺にだって分かる。これは魔術師の継承の儀式だ。苦しそうだからって余人が入っていけるものじゃない。

「――htm ξwαt phrn……」

「っ…………」

終った。意識を失いがっくりと崩折れるナタティリを抱きとめ、アケメス師はシオンさんに向き直った。

「今、ナタティリに印可を譲った。アトラシア殿、お願いと言うのは他でもない。ナタティリの後見をしてもらえないだろうか?」

「……了承しました。当面は私の補佐官をおつけしましょう」

「アトラシア殿。感謝します」

そのままアケメス師はナタティリをシオンさんに預けると、今度は俺に向かって姿勢を改めてきた。

「爺さん……良いのか?」

「それは此方の言葉だ」

そんなアケメス師に、俺もまた姿勢を正して問いかけた。
何をしたかはわかった。だが、この老人の決意に気圧されながらも、俺は聞き返さないわけには行かなかった。
命を削り俺達に力を貸してくれること、こんな少女に後事を託すこと、これもまた一つの切捨てだ。戻る事は出来ないとはいえ、出来ればそんな事はして欲しくなかった。

「吾の過ちがこの結果を生んだ。取り返す機会を与えて欲しい」

そんな俺の思いにも気が付いたのだろう。アケメス師は禿頭を垂れ、まるで慈悲を請うような仕草で俺に了承を求めてくる。

「……」

「シロウ……」

「わかった。その好意、受けさせてもらいます」

俺の沈黙に、セイバーも気が付いたのだろう。その一言に促され、俺はアケメス師の手を取り、頭を上げてもらった。
この老人の決意の重さを無下には出来ない。仕方がない事だともわかっている。だが、それでも口惜しい事には違いない。
出来るなら、誰にもこんな事をさせたくない。それが俺の本音なんだから。

「それじゃあ、早速始めよう」

ならばこれ以上、時を無駄には出来ない。
これからは、終わってしまった事を悔いるよりも、何を出来るかを考える時間なんだから。


前回の起を受けて、まずは士郎くん側の旅立ちです。
まるで誂えられたかのように次々起動する古代の神秘。その中で、凛ちゃんとルヴィア嬢の影は益々薄く行きます。
でも、それでも、だからこそ、ここは主人公の立つ所。
さて、それでは凛ちゃん達は? 後編をお楽しみください。

by dain

2005/2/2 初稿

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